- 手動で実績数値をGoogleスプレッドシートに入力する方法とその理由
- 毎日および週次で行う広告運用管理の手順と注意点
- 自動化とアナログ作業のバランスの取り方
以前に、まっちさん(@matchicchi)が「広告運用歴11年の私が毎日やってきた地味すぎる日課」というnoteを公開されておりました。
Web広告運用業務の中で発生する「手作業」についての内容なのですが、私も同様のことを続けておりまして、『やる人はやっているんだなぁ』と嬉しい気持ちになり、noteをツイートで紹介しました。
そのとき、まっちさんから『田島さんのシート見てみたい』とリプライいただきました。
見つけていただき、ありがとうございます😆
田島さんのシート見てみたい👀— まっち@おっさんWEBマーケコンサル (@matchicchi) November 7, 2022
今回のブログでは『私はどんな感じでリスティング広告(Web広告)の運用管理をしているのか?』を紹介します。
私もまっちさんと同じように「Googleスプレッドシートに実績数値を手入力する」という作業を毎日行っています。実際に活用しているGoogleスプレッドシートのサンプルも公開しますので、ご自由にお使いください。(Googleスプレッドシートの関数などが間違っていても“自己責任”でお願いします!)
初心者でも出来るリスティング広告(Web広告)の運用管理方法ですので、「リスティング広告(Web広告)運用を始めたばかりの人」や「インハウスでリスティング広告(Web広告)運用を独学で行ってきた人」などの参考になれば幸いです。
目次
- 1 私のリスティング広告(Web広告)の運用管理は、Googleスプレッドシートに「手作業」で実績数値を入力しています
- 2 毎日行うリスティング広告(Web広告)の運用管理の紹介
- 3 週次で行うリスティング広告(Web広告)の運用管理の紹介
- 4 リスティング広告(Web広告)の運用管理を“手作業”で行っている理由
- 5 ①:毎日(毎朝)お客様の広告アカウントと向き合う時間を作る
- 6 ②:リスティング広告(Web広告)の成果が上がる
- 7 ③:自動生成されたレポートを見ただけでは気づかないこともある(※私の場合)
- 8 ④:リスティング広告(Web広告)運用という仕事に「自信」を持てる
- 9 まとめ:「自動化すべき作業」と「アナログな作業」を上手く融合しよう
私のリスティング広告(Web広告)の運用管理は、Googleスプレッドシートに「手作業」で実績数値を入力しています
私がリスティング広告(Web広告)の運用管理で行っていることは、とてもシンプルです。
広告アカウントの管理画面にログインして、案件ごとに用意したGoogleスプレッドシートの管理表に実績数値を「手作業」で入力します。「手作業」の部分は、管理画面からcsvレポートをダウンロードして、Googleスプレッドシートにコピー&ペーストします。案件によっては、管理画面からそのまま数値をコピー&ペーストすることもあります。
実績数値を「手作業」で入力するGogleスプレッドシートの管理表は2種類あり、「①毎日行う実績数値の入力」と「②週次単位での実績数値の入力」です。
「毎日」と「週次」のリスティング広告(Web広告)の運用管理について、それぞれのGoogleスプレッドシートと活用方法をご紹介します。
毎日行うリスティング広告(Web広告)の運用管理の紹介
毎日の運用管理業務は、このGoogleスプレッドシートを使っています。
※このGoogleスプレッドシートのURLはコチラ
ここから先は「セル」についての説明が長く続きますので、サンプルのGoogleスプレッドシートを開きながらお読みください。
「毎日行うリスティング広告(Web広告)の運用管理」シートの下準備
まずはB列の「B5」から下に“媒体名×キャンペーン名”を、C列の「C5」から下に“媒体×キャンペーン毎の予算”を入力します。
「B列」の“媒体名×キャンペーン名”をどこまで細かく分けて管理するかは、案件によって異なります。私の場合は、そもそも広告キャンペーンを分けるときは、何かしらの意図があるので、“媒体名×キャンペーン名”で分けて進捗をチェックすることが多いです。
ちなみに、「B列」の“媒体名×キャンペーン名”のセルの色ですが、「Google検索広告:薄い緑」「GDN:濃い緑」「Yahoo!検索広告:薄いオレンジ」「YDA:濃いオレンジ(赤)」「YouTube動画広告:青」「Facebook広告:紫」と分けています。これは個人的な“手入力するときに媒体を間違えないための工夫”です。
次に、セルの「D3」に“開始日”を、「F3」に“終了日”を入力します。スポット案件でなければ「D3:月初の日付」、「F3:月末の日付」を入力しています。
ここまでが下準備です。
「毎日行うリスティング広告(Web広告)の運用管理」シートの手入力作業(水色のセル)
毎日行うリスティング広告(Web広告)のチェック作業は、広告管理画面の数値を“水色のセル”にコピー&ペーストで入力していきます。
まず「E3」に集計日(チェック作業を実施する当日の日付です)を入力します。また、「土日祝は広告を止める案件」の場合は、「H3」に“残りの土日祝の日数”を確認して入力します。
次に「D列」「H列」「I列」「L列」「M列」それぞれの“水色のセル”に、“開始日(月初)から前日までの数値”をコピー&ペーストで入力します。「L列」「M列」の“コンバージョンの種類”は、案件によって異なりますので、他にも資料ダウンロードCVなどのコンバージョンを計測している場合は、コンバージョン入力用の列を追加します。
次に「F列」の“水色のセル”に、“前日のみの配信金額”を入力します。
以上でコピー&ペーストの作業は終了です。
「CTR」「CPC」などは関数で計算(手入力は無し)
「J列」のCTR、「K列」のCPCは、水色のセルに入力した数値を元に、関数で表示しています。
コンバージョンに関連しては「N列」に各コンバージョンの合計値(総CV数)を出し、「O列」に総CVR、「P列」に総CPAを関数で表示しています。
なお、昔(運用1~2年目の頃)は、「総コンバージョン」ではなく、「コンバージョン毎のCVR、CPA」を表示させていました。実際、「Web問い合わせ」と「電話問い合わせ」の許容CPAは、受注率などによって異なりますので、それぞれのコンバージョンの数値を見た方が良いです。
ただ、毎日数字をチェックするようになると、
『コンバージョン全体のCPAは抑えられているけど、それは先月よりも「電話コンバージョン」が多いからだな』
と傾向が把握できるようになったので、今は「総コンバージョン数」でチェックしています。
コンバージョン毎のCVRとCPAを把握したい場合は、関数の列を増やすだけですので、把握しやすいチェック表にアレンジしていただければと思います。
「E列:1日に配信する広告費の目安」と「G列:進捗率」について
そして、ここから説明することが、2013年からリスティング広告(Web広告)の運用に携わっている、“私なりの工夫ポイント”です!
まず、「C3」の“残日数”は、集計した当日を含めた残りの広告配信日数です。「F3」の“終了日”、「E3」の“集計日”、「H3」の“残休日”を元に、「C3」に“残日数”が関数で表示されます。サンプルのように、23年1月19日にチェックしたのであれば、19日を含めて広告を配信する日数は「9」と表示されます。
次に「E列」の茶色いセル“1日に配信する広告費の目安”には、以下の関数が入ってます。
(「広告予算」-「前日までの配信金額」=残りの広告予算)÷「残日数」
つまり
『残りの日数は、毎日「〇〇〇円」を目安に配信すると、「各媒体×キャンペーンの予算」に合った配信ができますよ』
という、“1日あたりの目安の金額”が表示されます。
次に「G列」の“進捗率”には、以下の関数が入ってます。
(「前日までの配信金額」+「前日の配信金額」×「残日数」)÷「広告予算」
つまり
『残りの日数を「前日の配信金額」のペースで掲載しつづけると、「広告予算」に対して〇〇パーセントの配信金額になりますよ』
という、広告予算に対しての配信金額のペースが「パーセント」で表示されます。広告予算よりも配信ペースが多い(100%を超える)場合は赤い数字、配信ペースが少ない(95%以下になる)場合は青い数字で表示するように条件付き書式を設定しています。
「G列」の“進捗率”と、コンバージョンの数値を見比べることで
『〇〇キャンペーンはCPAが好調だけど、配信ペースが多い(早い)なぁ。お客様に「予算を守って運用した方がいいか?」「予算を追加してコンバージョンを取りに行くか?」を相談しよう』
『今月はGDNよりもYDAの方が成果が良いな。早めに予算のアロケーションを提案しよう。』
みたいな傾向を、月初の早い時点(5~7日目あたり)で気づけます。
ですので、例えば「前月の振り返りミーティング」を毎月10日前後に実施しているなら、そのミーティングの中で「今月の見込み」も報告できます。(当たり前って言えば当たり前ですが…)
このような「青いセルに実数値をコピー&ペーストで入力する」という作業を、毎日“上書き保存”で更新していきます。日別の数値は残しません、あえてね。
※ただ、「〇日:広告文を変更」のような作業履歴や、「〇日:検索語句△△の表示回数が増加」のような気付きは、「合計」の下の行にメモを残しておきます。
「毎日の数値」は積み上げないの?(残しておかないの?)
リスティング広告(Web広告)の日々の運用管理で、「前日の数値をチェックして記入する」というやり方をしている人もいるかと思います。
↓こんな感じで。
私もリスティング広告(Web広告)の運用に携わった最初のころは、このやり方も試したのですが、「前日の数値」を記入しておいても、数日経つと数値が変わっているんですよね。「後からコンバージョンが発生した」や「不正クリック分が減った」などの理由で。
なので、
『前日の数値を残して積み上げても、数値は変わるよね…。だからと言って、毎日「日別レポート」をダウンロードして、日別の数値を更新すのも微妙だなぁ…。』
という理由で、毎日の運用管理は、“積み上げ型”ではなく“上書き型”にたどり着きました。
ただ、毎日「上書き型の進捗チェック」を続けるだけですと、日々の傾向が把握できなくなります。
『19日の時点でチェックしたらCPAは好調だけど、これって月初からずっと好調だったっけ?それとも中盤から成果が伸びたんだっけ?』
という傾向が、パッと見ただけでは判断できません。
そこで毎日行う「上書き型の運用管理シート」とは別に、「週次で行う運用管理シート」を作成しています。
週次で行うリスティング広告(Web広告)の運用管理の紹介
週次の運用管理業務は、このGoogleスプレッドシートを使っています。
※このGoogleスプレッドシートのURLはコチラ
これは「積み上げ型」の運用管理で、毎週火曜日に前週の「月~日」の数値をコピー&ペーストで入力しています。
「毎日行う運用管理シート」との違いは、「インプレッションシェア」や「掲載順位に関するインプレッション割合(検索広告の場合)」も入力しています。条件付き書式やグラフ機能を使って、「この週はクリック数が増えた」などを、パッと見て傾向が分かるようにしています。
また、「備考」のところには、「毎日行う運用管理シート」にメモした内容を記載しておきます。「この週から急にクリック単価が上がったのは、入札タイプを変えため」と、施策に対する数字の変化を後から見ても分かるようにするためです。
「毎日のチェック」「週次のチェック」どちらも文字にすると、作業が多くて時間がかかりそうですが、管理画面の操作に慣れてしまえば意外にパパっと出来ます。
リスティング広告(Web広告)の運用管理を“手作業”で行っている理由
「毎日の運用進捗シート」も「週次の運用進捗シート」も、数値の集計自体は自動集計ツールなどを使えば一瞬で作成できるものです。
私がWeb広告代理店に勤めて、初めてリスティング広告(Web広告)運用に携わった2013年頃、その代理店では既に「前日までの数値を自動で抽出する仕組み」が用意されていました。出社したら、担当する全ての案件の数値を集計したExcelがメールで送られてくるみたいな。
ただ、当時に指導してくれた先輩が
『自動抽出のレポートを見ても、「運用してる気分になるだけ」で、何も把握できないぞ』
と、運用管理用のExcelを渡してくれました。このExcelを元にして、「進捗率」などのアレンジを加えて、今でも手作業での運用管理を行っています。
こんな「非効率な手作業での集計」を続けている理由を以下にまとめました。
①:毎日(毎朝)お客様の広告アカウントと向き合う時間を作る
「毎日行う実績数値の入力」は、平日も土日祝も「7時~10時」の間に行っています。そして、1案件に対しての確認作業は最低でも15分ほどの時間をかけています。
この毎朝の「1案件15分の作業時間」を、単純作業の時間で終わらせるのではなく、「広告アカウントを向き合う時間」として、頭も一緒に働かせています。
また、朝の「7時~10時」の時間帯は、頭もスッキリしていて集中もできるので、広告の管理画面にログインして数値を確認していると、「気づき」や「閃き」が出てきます。
毎朝、広告の管理画面にログインするメリットについては、別のブログにも記載していますので、ご興味のある方は下記のブログを読んでみてください。
②:リスティング広告(Web広告)の成果が上がる
単純に『広告費を“適切に使う”だけで、リスティング広告(Web広告)の成果は上がります』です。
この「適切に使う」の意味としては
・成果の良い媒体(キャンペーン)、成果の悪い媒体(キャンペーン)への予算配分が絶妙。
・広告予算に合わせた配信が出来ている。⇒例:インプレッションシェア損失率(予算)が少ない
・「月初⇒中旬⇒月末」の予算配分が上手い。
などなど。
『「月初⇒中旬⇒月末」の予算配分が上手い』に関しましては、株式会社JADEさんのブログ「【広告主に知っておいてほしい】Web広告のお金周りのポイント5つ」の中に記載されている「5.月の後半に予算を大幅に上げると、もったいないお金の使い方になる」が参考になりますのでご紹介します。
「毎日の運用進捗シート」で、「媒体×キャンペーン」の成果と広告予算の配信ペースを確認し、「週次の運用進捗シート」でインプレッションシェアやコンバージョン発生の傾向を確認することで、広告費を適切に使うことができます。
例えばBtuBの商材で、過去の実績から「連休とその前後はコンバージョンが獲得しづらい」ことが分かっている案件。とある月で、後半に連休が続く場合、「毎日の運用進捗シート」の「進捗率」を使って、
『連休前の20日までは配信ペースを「130%」で運用して、連休に入ったら配信ペースが「100%」に収まるように絞りながら運用しよう。』
なんてことも可能です。
『こうゆうのって「自動入札」が上手く調整してくれるんでしょ?』
と思われるかもしれませんが、「自動入札」は人間(広告運用者)の設定に合わせて調整が動きます。
「自動入札」を上手く活用するためにも、日ごろの「運用管理」や「状況把握」が大切です。
③:自動生成されたレポートを見ただけでは気づかないこともある(※私の場合)
これは私個人の偏見なのですが、
『リスティング広告(Web広告)の運用者が、広告管理画面にログインしなくなったら終わりだな…』
という考えをもっています。ほんとに偏見ですが。
Web広告代理店に勤めていたときも、「自動抽出レポート」に頼っていて、広告の管理画面にログインしない運用者もいました。
広告の管理画面にログインしなくなることの弊害は、『数字が変化した理由に対して、関心が薄くなるのでは?』と感じています。ほんとに偏見です。
特に私の場合は不器用な人間でして、自動抽出された数字だけを見ても「気づき」や「閃き」が出てこないです。例えば前日のクリック単価が急に上がっているのであれば、広告の管理画面で「デバイス別」や「時間帯別」の数値を確認して、「検索語句」の傾向も見て、『あー、もしかしたら〇〇〇かな?』という気づきがやっと出てきます。
広告の管理画面にログインしなくても、ダッシュボードツールを上手く活用すれば「時間帯別」や「デバイス別」などの数値は確認できると思いますが、私の場合は
『広告の管理画面から数値を見ないとイメージが湧かない』
という感じです。
また、広告の管理画面にログインすると、「最適化案」や「オークションレポート」などの機能を使えるので、広告の管理画面にログインする習慣があると「気づき」や「閃き」も出やすくなると感じます。
④:リスティング広告(Web広告)運用という仕事に「自信」を持てる
ここは気持ちの部分です。スピリチュアルです。
『毎日、数字をコピー&ペーストで集計して確認しているから偉い!』
とは全く思いませんが、
『真剣にリスティング広告(Web広告)を運用している自分が、片手間の運用でマージン手数料を稼いでいるクソみたいな代理店には意地でも負けたくない。』
という気持ちにはなります。ついつい言葉が汚くなってしまいました。申し訳ございません。「クソみたいな代理店」ではなく「ウンチみたいな代理店」に訂正させていただきます。
まとめ:「自動化すべき作業」と「アナログな作業」を上手く融合しよう
ここまで「コピー&ペーストのアナログ作業」について書いてきましたが、あくまでも自分自身が運用状況を把握するための手段です。
「毎月提出する定型レポート(地域別や時間別など)」を手作業で集計しているのなら
『レポート生成を自動化したほうが良いよ。その作業時間がもったいない!』
です。
「自動化すべき作業」と「アナログな作業」を上手く使い分けていただければいいかなと。
余談ですが、イチローさんは現役時代、練習後に道具(グラブ)を自分自身で磨いていました。時間効率を考えたら、グラブ磨きを誰かに任せて、その時間をイチローさん自身の練習や休息に当てた方が良いはずです。
しかしイチローさんにとっては「自分でグラブを磨く時間」に大切な意味があって、私はリスティング広告(Web広告)運用の仕事でも同じではないのだろうかと考えています。
※出典:「夢をつかむ イチロー262のメッセージ」