検索語句レポートのアイキャッチ

2020年9月、Google広告(Yahoo!広告も)に仕様変更があり、検索語句レポートに表示される件数が減少しました。

ウェブ広告運用者にとって、かなり影響が大きい仕様変更です。

2020 年 9 月より、クリックを獲得している語句がある場合でも、多くのユーザーが検索した語句のみが検索語句レポートに表示されるようになります。そのため、レポートに表示される語句が少なくなることがあります。

引用元:検索語句レポートを表示する - Google広告ヘルプ

レポートに表示される検索クエリーは、多くのインターネットユーザーが検索した語句のみです。
2020年9月以降、広告のクリックが発生した検索クエリーでもこの条件にあてはまらない場合はレポートに表示されないため、検索クエリー数が少なくなる場合があります。

引用元:検索クエリーレポート - ヘルプ - Yahoo!広告

※「検索語句レポートの表示」に関連する記事

私も9月3日に、Google広告の管理画面に出ていた英語の告知で気づき、9月は検索語句をこまめにチェックしていました。

今回、私が運用している広告アカウントについて、2020年9月の検索語句(検索クエリー)レポートの表示数がどれだけ減ったか、またその影響をリスティング広告運用者の立場からまとめます。



2020年8月と9月の検索語句(検索クエリー)レポートを比較

2020年9月の検索語句(検索クエリー)レポートが、8月よりもどれぐらい減少したか、3つの案件で比較します。

ケース①:検索広告予算:月2,000万円の案件(運用期間:2年)

BtoCの単品商材で、お問い合わせ獲得案件です。

2年ほど運用しているので、検索語句の特性やトレンドなどは把握できている案件です。

まず、20年8月の検索語句レポートの管理画面キャプチャーです。

Google検索広告クエリのキャプチャー(ケース1:20年8月)

次に、20年9月の検索語句レポートの管理画面キャプチャーです。

Google検索広告クエリのキャプチャー(ケース1:20年9月)

8月と9月の数値をまとめた表です。

検索語句ケース1の比較表

9月の「不明な検索語句」の広告費が約268万円(配信した広告費の13.3%)でした。8月から12.2ポイント増加しています。

余談:運用代行手数料について

広告費2,000万円の数字を見た人には

『手数料マージン20%だとしたら、コイツ稼いでやがるな』

と思われがちですが、私どもは運用工数に合わせた「固定手数料」で運用代行を請け負っております。

このケース①の案件は、いただいている手数料をマージン率に換算すると"1%未満"になります。

※参考ブログ:リスティング広告の手数料の決め方(工数見積)について

『手数料が広告費の20%も取られるなんて高すぎる…』

と疑問をお持ちの企業様は、お気軽にご相談ください。(ニッコリ)

>>>「リスティング広告の運用代行サービス」の詳細を見る

ケース②:検索広告予算:月10万円以下の案件(運用期間:3か月)

BtoCの実店舗への誘導を目的とした案件です。

全体的にコンバージョン率が高いのは、コンバージョンに「店舗詳細ページの閲覧」などを含めているためです。

まず、20年8月の検索語句レポートの管理画面キャプチャーです。

Google検索広告クエリのキャプチャー(ケース2:20年8月)

次に、20年9月の検索語句レポートの管理画面キャプチャーです。

Google検索広告クエリのキャプチャー(ケース2:20年9月)

8月と9月の数値をまとめた表です。

検索語句ケース2の比較表

9月は8月よりも広告費を抑えましたが、約15%の検索語句が不明となっています。

ケース③:検索広告予算:月30万円の案件(運用期間:20年9月より新規運用)

BtoBのリード獲得案件です。

20年9月から検索広告の配信をスタートした案件で、サービス自体が新規事業だったので検索広告を実施するのも初めて。

お客様も私も、検索語句の仮説は立てていたけど、実際の傾向は把握しきれていない状態でした。

20年9月の検索語句レポートの管理画面キャプチャーと、数字をまとめた表です。

Google検索広告クエリのキャプチャー(ケース3:20年9月)

検索語句ケース3の表

新規スタートした案件については、約5割の検索語句が「不明」となりました。

コンバージョンに至った検索語句は、約6割が「不明」となりました。

後述しますが、ウェブ広告運用者にとって、かなり運用施策がやりにくい状態です。



リスティング広告従事者にTwitterアンケートを実施してみた

10月5日にTwitterアンケートで「検索語句レポートの表示件数の減少」について、どれぐらい困っているか聞いてみました。

「少し困っているけど、大騒ぎするほどではない」が一番多い意見でした。

詳しく書くのは控えますが、代理店によっては”逆に好都合”と考えているところもあるのかも。(この仕組みを利用して、悪いこともできちゃうので…)

ちなみに私は「めちゃ困っている。運用方法、報告レポートの見直し必須」です。

私が困ったことは、大きく分けてこの3つです。

  • その1:広告費がどこに使われたか分からなくなった
  • その2:除外キーワードの選定が難しくなった
  • その3:コンバージョンに寄与した検索語句・検索クエリーが分からなくなった

それぞれ「困り度」と合わせて紹介します。



影響その1:広告費がどこに使われたか分からなくなった(困り度:小)

ケース1では広告費の「約268万円(配信した広告費の13.3%)」がどんな検索語句に使われたか不明です…。

ケース3では広告費の「約15万円(配信した広告費の47.6%)」が不明です…。

ただ

『今まで、月に1クリックあるかないかの検索語句の費用まで、全て把握していたのか?』

と突き詰めていくと、さすがにそこまでは把握はしていないので「困り度:小」としました。

【注意】この「困り度」はあくまでも運用者目線の話です。

お客様にとって「広告費の一部がどこに使われたか分からない」ということは、今の時代に反した仕様変更だと考えています。



影響その2:除外キーワード、部分一致キーワードの選定が難しくなった(困り度:中)

これもなかなか困った現象です。

広告運用のスタイルは運用者によって様々ですが、私は新規案件のスタートから1ヵ月は

①「絞り込み部分一致キーワード」を軸にキーワードを登録⇒配信開始(自動入札)

②検索語句を見ながら、除外キーワードを追加

③検索語句の傾向を見て「普通の部分一致キーワード」を追加

④「普通の部分一致キーワード」が拾う検索語句を見ながら、除外キーワードを追加

⑤検索語句とコンバージョン数の状況に合わせて、アカウント構成や広告、入札方法の見直し

こんな感じで進めます。

途中から「通常の部分一致キーワード」を追加するタイプ。

「除外キーワードの登録」は、どこまで細かくやるかは人それぞれで、私は「除外すべきか迷った検索語句は“除外しない”」の粒度。“絶対に検索意図が違う”と判断できるものだけ除外。

今回、確認できる検索語句が減ったので、9月から新規スタートした案件は苦労しました。

特に②の「除外キーワード」は、お客様からお問合せ内容の詳細を共有してもらい、そこから「不要なお問い合わせ」の内容を確認して、

『この人は、たぶんこんな検索キーワードを使ったんだろうな』

と想像しながら除外キーワードを登録してきました。

とはいえ「“絶対に検索意図が違う”と判断できるものだけ除外キーワード設定」の私なので、スタート後の除外キーワードの設定頻度は今までの1/3ぐらいにまで減りました。

②に除外キーワード登録の網羅に自信が無かったので、③の「通常の部分一致キーワードを追加」も見送りしました。

私よりも除外キーワードをがっちりと行う”除外キーワード原理主義者”の人は、9月からの新規案件の運用はもっと苦労されたかと思います。

こちらは「困り度:中」としました。



影響その3:コンバージョンに寄与した検索語句(検索クエリー)が分からない (困り度:大)

「コンバージョンに寄与した検索語句が分からない」これが一番困りました。

『コンバージョンした検索語句も表示させないんかい!』

と驚きました。

特に新規案件は、スタート直後の検索語句の傾向を見て、アカウント構造を変えたり、広告文を見直したりするので、ほんとに厳しいです。

お客様への報告レポートも、検索語句の傾向をまとめて、例えば

『Knowクエリーからのコンバージョンが増えてきた(または減ってきた)ので、LPや広告に〇〇〇訴求を追加しましょうか?』

みたいな施策提案をしているのですが、そもそもコンバージョンに貢献した検索語句が主軸のものしか分からないので、こういった提案が難しくなりました。

JADE様の「Google広告やるべきことTips集」

の「広告ごとにどんな条件で配信されたか確認して分析する」にも記載されている内容を引用します。

□次に何をするか決めるために、広告の分析は欠かせない

【3】作るべき広告 にて説明したとおり、広告がいつ、どこで、誰に、どんな検索クエリ(※)で表示されるか、このことに大きく影響するのが、広告テキストの内容です。

同じキーワード、同じターゲティング設定であっても、広告テキスト次第で配信のされ方が変わります。
なので、実際に各広告がどう配信されたかを確認して分析していくということは、どいういう広告を作ればどういうターゲットにアプローチできるかを知ることであって、これは広告を改善していくうえでとても重要なことです。

※Google 広告では「検索語句」と表記されていますが、このページでは、広告管理画面のことに限らないことを指しますので、一般的に広く使われる「検索クエリ」という言葉を使うことにします。

広告の分析のために、具体的に確認するべきことは下記のようなデータです。

広告×検索クエリ
広告×デバイス
広告×OS
広告×ブラウザ
広告×年齢
広告×性別
広告×曜日
広告×時間帯
広告×セッション回数
広告×新規訪問 or リピート訪問
広告×地域
広告×興味関心ごと

また、これらの表示回数、クリック数、セッション数、コンバージョン数、費用などです。

それぞれ、確認のしやすさ、確認できるデータの内容、精度、確認方法などは異なります。

これらをできるだけ横断的に確認し、いつどこでどういう人に広告が表示されてなぜクリックされたのかを、探り、考え、想像します。

引用元:広告ごとにどんな条件で配信されたか確認して分析する

この「広告×検索クエリ」も確認できる検索語句の対象が減ってしまったので、「想像」がなかなか難しくなってしまいました。

ということで「困り度:大」です。



今後の懸念

今の私のお客様に対しては、「田島にお任せします」という感じなので、そこまで懸念はしていなのですが、今後こんな風潮が出てくるのかな、と。

・「普通の部分一致キーワードは使いたくない」と言われる。
・「確認できるように登録キーワードを増やして」と言われる。

昔みたいな“キーワードの登録数で勝負”の世界に戻るのですかね?



まとめ

今回の仕様変更の理由が「プライバシー保護」と言われてしまうと、プラットフォームの方針に従うしかないのかなと考えていますが、正直なところ

『広告費がどう使われたかを隠しちゃうの?』

と思っています。

あと、cookieをはじめとした「インターネットと個人情報保護」について、もっと勉強しないとダメだなと感じました。

『プライバシーの保護が理由なら「カスタマーマッチ」の機能は大丈夫なの?』とか。

『そもそも広告管理画面上で検索語句レポート単体を見ただけで、個人なんて特定できないんじゃない?』とか。
⇒外部ツール(GAとか)と連携できるので、検索語句と他のデータと組み合わせると話が変わってくるんですよね。

私は今回の「検索語句」の件について、議論や反論できるほどの知識を持っていないなと感じました。

そして、今後はもっと

『今まで見えていたものが、どんどん見えなくなっていくのかな』

と想像してしまいました。(Googleアナリティクスなどのデータも)

今までの手法やノウハウが、ガラリと変わりそうですね。



余談:量子力学の世界の話に似ている?(興味のない方は飛ばしてね)

この「見たくても見ることができない世界」で、私は「量子力学」を思い出しました。

「量子力学」というのは、物質の元となる「素粒子」とか「電子」とか、目には見えないミクロの世界を研究する分野です。

で、このミクロの世界は困ったことに、

『計測すると「計測したこと」が影響して、実験結果が変わってしまう⇒なので、計測(確認)することができない』(例:「二重スリット実験」)

という事象が起こります。

『現象は起きているけど、その理由は誰にも分からない』

『ならもう、実験結果を元に「恐らくこうです」という“解釈”をしましょう。“解釈”が正しかどうかは誰にも証明できないけど』

みたいな感じです。ツジツマに合わせた“解釈”の世界ですよ。

でもこの良く分からない「量子力学」の研究のおかげで、半導体やスマートフォンの技術が発展しました。

※「量子力学」に詳しい人へ、間違っていたらごめんなさい。でも、ノーベル賞を受賞した科学者のリチャード・ファインマンさんも『量子力学は誰にも理解できない』って言っていますので。

話をGoogle広告、Yahoo!広告に戻すと、この先どんどん分析したくても分析できなくなるので、媒体のブラックボックスをどう“解釈”するかの世界になるのかな、と想像してみたり。

誰にも“解釈”が正しいか確認できないので、報告レポートの中身もツジツマ合わせの色々な“解釈”が飛び交う世界になるのかも?

『この広告文は起点となるロングテールの検索語句を拾っていそうです。確認はできませんが!』

『Google広告、Yahoo!広告の自動入札が良い感じに動いているようです。確認はできませんが!』

『先月のコンバージョンが増加したのは、妖精さんのおかげかもしれません。確認はできませんが!』

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