先日、『クリック率が高い広告文を考える』というリスティング広告の勉強会を実施しました。
勉強会では、用意されたお題に対して参加者全員が広告文を作成&発表し、参加者の投票により”最も良い広告文”を決めました。
今回、参加者が作成した全ての広告文を実際に10日間配信して、
『人が良いと思う広告文と、実際にクリックされる広告文の違い』
を調べてみました。
目次
参加者が作成した広告文について
勉強会には11名に参加いただき、「薬剤師の転職サイト」(広告の配信エリアは千葉県船橋市)をお題に、合計11パターンの広告文が作成されました。
11パターンの広告文と、投票数はこのような結果でした。
最も得票数が多かった広告文は①でした。
この広告文の作成者の意図はこちら。
最も重要視したことは『広告文のクリエイティブが他の検索結果に埋もれないようにする』です。
薬剤師転職で表示される広告文は多いため、あまり競合が使用していなかった投げかけ系の「薬剤師の転職は難しい?」を見出し1に使用し、他の広告文との差別化を狙いました。
見出し1を投げかけ系にして、続きが気になる感をだしつつ、説明文1の冒頭で「《高収入・ブランクOK案件多数》」と、具体的なメリットを全面に出すことで、見出しの「クエスチョン」と説明文の「アンサー」によるメリハリ効果で、クリック率アップを狙いました。
また『ビジュアルが埋もれない』ための施策として、広告文全体を眺めながら「エージェント」「コツ」「プロ」「ブランク」「キャリア」の”カタカナ”と、「2019」「3つ」「120%」の数詞をバランスよく配置し、また、体言止めや「・」を活用して、『広告が表示されてから5秒以内にリズムよく読める』ことを意識して作成しました。
今回、千葉県船橋市に配信の条件でしたが、千葉県訴求はあえて避けました。
理由は、リンク先ページの内容が千葉県に特化してはいなかったことと、また千葉県船橋市であれば地元で働きたい人よりも、東京都心に出て働きたいというニーズの方が多いと考えたためです。最近の検索クエリの傾向を見ても、わざわざ地域名を入れて検索する数が減少していると感じています。
今回のお題の地域が「札幌」であれば、地域名を入れることは有効だと思いますが、千葉の場合は逆に「東京で働きたいと考える薬剤師」のクリックを逃すと考え、千葉訴求を外す代わりに『クリエイティブが如何に目に留まりやすいか』に注力した広告文を提出させていただきました。
「Google広告」で実際に11パターンの広告文を配信してみた結果
11本の広告をこのような条件で、10日間配信しました。
・配信地域:千葉県船橋市
・登録キーワード:「薬剤師の転職」「薬剤師の求人」の部分一致キーワード2つ
※除外キーワード設定は無し
・1日の予算:3,000円
・入札設定:掲載開始時から「コンバージョン数の最大化」にて配信
そして、実際の配信結果はこちらです。広告文の番号がラベルに対応しています。
広告文別数値:表示回数TOP3
広告文別数値(表示回数4~7位)
広告文別数値(表示回数8~11位)
「人間(SEM従事者)が良いと思う広告文≠クリックされる広告文」
実際に配信して、表示回数、クリック率がもっとも良かった広告文は②でした。
表示回数1位の広告文は、投票でも2票獲得していた広告文でした。
しかし、表示回数が2~6位までの広告文は、投票では0票の広告文です。
さらに、投票で1位だった①の広告文は、実際に配信すると表示回数は8位という結果に…。
作成いただいた広告文が、全体的に≪千葉県船橋市の薬剤師求人なら》という訴求が多かったので、広告文を同時に登録して配信した結果、「千葉・船橋訴求」の広告文は表示回数が分散したのかな、と。
あと「元薬剤師転職コンサル」の経験から言うと、船橋に住む薬剤師の方は総武線で新宿まで出れるので、東京の病院や薬局の求人を探す人の方が多いです。
また、広告文の定石として、「広告文に検索キーワードが入れる」や「数字を使って具体性を出す」などありますが、定石に沿って広告文を作っても成果(今回の場合は「表示回数」と「クリック率」)に繋がるとは限らない。
そんなことを感じさせる配信結果でした。
表示回数TOP3の広告文に反応した検索語句(クエリー)
広告配信では、登録キーワードに「薬剤師の転職」「薬剤師の求人」の部分一致キーワードを設定したので、幅の広い検索語句(クエリー)で広告が表示される設定でした。
表示回数の上位3つの広告文について、どんな検索語句(クエリー)でクリックされたのかを、Googleアナリティクスで確認しながら、”どうして表示回数が多かったのか”を推測してみます。
表示回数1位:②の広告文に反応した検索語句(クエリー)
表示回数1位の広告文は、アフィリエイターの方が作成した広告文です。
私も某アフィリエイトサイトを運用していますが、アフィリエイトで大切な「ユーザーの感情をとらえる」エモーショナルな広告文だなという印象でした。
この広告文がクリックされた検索語句(クエリー)はこちらです。
「年収」「給料」といった、転職・就職を考えていそうなユーザーの検索語句(クエリー)に反応している傾向です。
あくまでも推測ですが、エモーショナルな広告文の方が「年収」「給料」といった、具体的な検索ニーズを拾いやすいのかな、と。
ただ、「クラシス」「はなまる薬局」「メディカルリソース」といった指名キーワードに反応しているので、良くも悪くも表示回数が多かった要因かなと。
表示回数2位:⑧の広告文に反応した検索語句(クエリー)
表示回数2位の広告文は、事業主側のマーケティング部長(リスティング広告の運用経験なし)が作成した広告文です。※私のクライアント様です。
「広告文の作り方が分からない」と仰っていましたが、なかなか検索ユーザーの感情に沿った広告文を作ったなという印象です。
※ちょっと話は変わりますが、広告文は「クライアント様と一緒に作る」と、成果も出やすくなります。
この広告文がクリックされた検索語句(クエリー)はこちらです。
「調剤 薬局 事務 求人」と「千葉 薬剤師 求人 ドラッグ ストア ど に ち のみ」での2クリック。
これも推測ですが、広告文の『正しいサイト選びが大切』という訴求自体は、Googleのシステム的に”役に立つ広告文(優先して表示すべき広告文)”と判断したのかな、と。
ただ、広告文のタイトルで【船橋市】と、対象ユーザーを限定してしまったので、表示はされるもののクリックには繋がらなかったのかな、と予想します。
表示回数3位:⑪の広告文に反応した検索語句(クエリー)
こちらの広告文は、私がリスティング広告運用会社に勤めていたとき、一緒に同じ会社で働いていた元同僚(今は大手総合代理店に勤務)が作成した広告文です。
配信する時期は1月なのに、「もう年末」という訴求とカウントダウン関数を使って、"なんだこりゃ?"と興味をそそる(誤クリックを狙う)作戦だそうです。
セコイです。
ただ、配信期間を計算して≪広告でのご案内は2月3日まで期間限定≫という訴求を入れてきたところは、さすが「元R+」だなぁと思いました。
この広告文がクリックされた検索語句(クエリー)はこちらです。
宣言通り、カウントダウン関数のギミックを使ってクリックを集めてくれたので、②や⑪の広告文と比べて「薬剤師の転職」とはちょっと遠い検索語句(クエリー)が反応してます。
改めて「広告文はクリック率だけじゃなく、クリックされた検索語句(クエリー)もチェックしなきゃダメ」と考えさせられました。
余談1:2017年に今回と同じような広告文の配信テストを実施しました
実は2017年に、『薬剤師の転職』案件で、似たような設定で広告配信のテストを実施しています。
登録キーワードを「薬剤師 転職」と「薬剤師 求人」の部分一致キーワード2本にすて、広告を30本入れて配信する実験です。
ご興味のある方は「【Google広告】広告文で検索クエリが変わる?SEMカフェで学んだ3つのポイントを検証」をご覧ください。
余談2:2018年のワールドカップ期間にこんなテストを実施しました
2018年のワールドカップ期間中、「大迫、半端ないって!」が流行ったときに、6月29日~7月2日の4日間のみ、2パターンの広告文をテスト配信していました。
そのときのキャッチーな言葉(よく検索されるキーワード)を広告文に入れると、"表示回数"は増えました。
今、このブログを書いているのが「平成最後の日」なので、この時期なら「令和」などを広告文に使うと、広告の表示回数も増えるのではないでしょうか。
まぁ、成果に繋がるかは別ですが…。
まとめ
配信期間:10日間(総配信金額:24,847円)と短い期間、また登録キーワードも部分一致キーワードのみ(除外キーワード設定なし)という条件での検証でしたが、
『人間(SEM従事者)が良いと思う広告文は、必ずしも実際の広告配信で成果を出すとは限らない』
という結果になりました。
※もちろん、登録キーワードのマッチタイプを変えたり、登録キーワード自体も「+千葉 +薬剤師 求人」や「+船橋 +薬剤師 転職」であれば、また違う結果になっていたはずです。
参考まで、「ユニコーンを探せ:クリック率を平均の3倍にする秘訣」の記事です。
『広告文を100回テストしキーワードと広告文のベストな組み合わせを見つける』
入札調整は機械(自動入札)に任せて、人間(SEM運用者)は広告文を考えることに注力すると、効率的に成果改善できると改めて感じました。
また、今回の広告配信時の入札設定は、掲載開始時から自動入札(コンバージョン数の最大化)にて実施したので、今回の”自動入札の動き”についても改めてまとめました。
「【Google広告】いきなり「自動入札」で配信すると、どんな動きをするの?」を書きました。
以上、平成最後のブログでした。