先日、株式会社ギャプライズ様で開催された『SEM居酒屋×ギャプライズDAY』の中で、ミニ勉強会を実施させていただきました。
ミニ勉強会で話した内容は、Yahoo!検索広告で19年7月にリリースされた自動入札「コンバージョン数の最大化」について、実際に「コンバージョン数の最大化」で運用を行ったアカウントの実データを紹介しながら、『リスティング広告の運用者は、自動入札とどう向き合えばいいのかな?』についてお話しさせていただきました。
今回はミニ勉強会でお話しした内容の一部をご紹介します。
※つい最近、『Yahoo!プロモーション広告』の名称が『Yahoo!広告』に変更すると発表がありました。
このブログでは『Yahoo!検索広告』と記載していきます。
目次
Yahoo!検索広告の自動入札「コンバージョン数の最大化」とは?
ざっくりと説明すると「キャンペーンに設定した上限予算を上手く使いながら、コンバージョンを多く取れるように入札を自動調整する」という自動入札です。
自動入札タイプ「コンバージョン数の最大化」は、キャンペーン予算(日額)内で、コンバージョンをできるだけ多く獲得できるように入札価格を自動調整します。
適した目的
予算を最大限に使ってコンバージョン(広告経由の購入や登録、資料請求など)をできるだけ多く獲得したい場合に適しています。入札価格調整の仕組み
キャンペーンの1日の予算の範囲内でコンバージョン数を最大化できるように、入札価格を調整します。広範囲のデータを活用した機械学習により、コンバージョン数を的確に予測してコンバージョン数の最大化を実現します。広告オークション発生のたびに入札価格をリアルタイムで調整します。
引用元:Yahoo!プロモーション広告ヘルプ:自動入札タイプ「コンバージョン数の最大化」
イメージとしては、キャンペーンの予算上限を「5万円」に設定したら、毎日5万円を配信しつつ、その上でコンバージョンが多く取れるように調整してくれる、”広告の配信量(使う金額)”を考慮してくれる自動入札です。
Google広告では以前から利用可能な自動入札の1つでしたので、Google広告では試したことがある方も多いかと存じます。
「コンバージョン数の最大化」の実施前後で比較した項目
私は4つのYahoo!検索広告アカウントで、2019年8月に「コンバージョン数の最大化」に切り替えて、それぞれどんな変化があるか試してみました。
今回紹介するのは2つの案件です。
1つ目は、「手動入札(拡張CPC)」から「自動入札:コンバージョン数の最大化」に切り替えた案件です。
2つ目は、「自動入札:コンバージョン単価の目標値」から「自動入札:コンバージョン数の最大化」に切り替えた案件です。
切り替える前の19年7月の数値と、切り替えた後の19年9月の数値を比較してみました。
比較する項目は以下の4項目です。
※7月~9月の間に、広告文やリンク先(LP)の内容を変えたりしているので、同じ条件での比較ではない旨、ご了承ください。
比較項目1:成果「コンバージョン数(CV数)、コンバージョン単価(CPA)など」
単純に「成果が上がったか、下がったか」の比較です。
基礎数値として、クリック率やクリック単価、コンバージョン数、コンバージョン単価などの指標の変化を見ていきます。
比較項目2:インプレッションシェア
”検索機会に対して、どれだけ広告が表示されたか”を比較していきます。
特に、「コンバージョン数の最大化」は、広告の配信量(使う金額)を考慮した動きをするので、『インプレッション損失率(予算)』がどれだけ変わるか(過剰に広告費を使ってしまっていないか)が気になりました。
比較項目3:検索クエリ
入札方法によって「検索クエリ」の結果がどう変わるか比較しました。
※「登録キーワード」の数値ではなく、「検索クエリ(実際に検索されたキーワード)」の数値です。
比較項目4:Yahoo検索広告から流入したユーザーの興味関心
このデータは、Googleアナリティクスの「オーディエンス」⇒「インタレスト」の項目の変化を比較しました。
カスタムディメンションの機能を使って、「Yahoo!検索広告から流入したユーザー」に絞り込んで比較しました。
カスタムディメンションの設定は、キャンペーンパラメーター「yahoo/cpc」を条件に、こんな感じで作成しました。
事例1:「手動入札(拡張CPC)」から「コンバージョン数の最大化」に切り替えたアカウント
士業案件のアカウントです。
広告用のランディングページ(LP)は2つあり、1キャンペーンに3つの広告グループが入っているだけの、シンプルなアカウント構成です。(google広告でいう「hagakure」、今回はYahoo!広告なので「CORE」ですかね。)
ぱっと見はシンプルなアカウント構成ですが、ミニ勉強会の中ではこのアカウントに設定している「アドカスタマイザー」について、マニアックな広告文の出し分けテクニックなどを紹介させていただきました。
また、どうしてこのアカウント構造なのか、またGoogle検索広告とYahoo!検索広告ではアカウント構成を変えている(正しくは”変わっていった”)、という話もさせていただきました。
このキャンペーンを「手動入札:拡張CPC」から「自動入札:コンバージョン数の最大化」に切り替えて運用しました。
(このアカウントには、もう1キャンペーンあるのですが、それは諸事情により非公開です)
比較項目1と2:成果とインプレッションシェア
Yahoo!検索広告の19年7月の広告費は「約90万円」でしたが、19年9月は「約135万円」と1.4倍ほど増えました。
しかし予算増にも関わらず、コンバージョン単価は下がって、コンバージョン数も増加した結果となりました。
「インプレッション損失率(予算)」も3.61%と、手動入札に比べると若干増えてしまいましたが、合格点は与えられる結果ではないでしょうか。
※私は代理店に勤めていたときに『「インプレッション損失率(予算)」は0%にしなればダメだ!』と言われていたので、ほんとは0%にできればいいんですけど、自動入札を使うとどうしても日予算設定で”自動入札の暴走”を抑えなければいけない部分もあったりして、なかなか難しいですよね…。
比較項目3:検索クエリの傾向
この表では「指名キーワードの検索クエリ」は除外しています。(とはいえモザイクばかりで、そもそも何の案件かも分からないと思いますが…。)
※並びは「クリック数の多い順」です。
結果としては「コンバージョンが発生している検索クエリのクリック数が増えている」となりました。
登録キーワードを「手動入札:拡張CPC」で調整するよりも、「自動入札:コンバージョン数の最大化」に任せた方が、コンバージョンに寄与する検索クエリを集めやすいようです。
Google検索広告でいう「シグナル」(検索ユーザーの検索履歴やサイト閲覧履歴など、自動入札が調整を行うときに活用する属性データのこと)を、Yahoo!検索広告はどこまで自動入札に活用しているかは不明ですが、少なくとも人間が管理画面で把握できる指標だけをもとに手動入札で運用するよりは、「自動入札:コンバージョン数の最大化」の方が広告表示機会ごとに高度な入札調整を行ってくれているようですね。
比較項目4:Yahoo検索広告から流入したユーザーの興味関心
士業案件のため、Googleアナリティクスの「購買意向の強いセグメント」に上手く該当するものが無かったため、「アフィニティカテゴリ」で比較しました。
結果としては「”TV Lovers”(テレビ好き)ユーザーのセッション数が増える」となりました。
これは自動入札の影響というよりも、もともとテレビCMを多く流しているクライアント様なので、テレビCMの出稿量の違いなどが影響している気がします。
事例2:自動入札「コンバージョン単価の目標値」から、自動入札「コンバージョン数の最大化」に切り替えたアカウント
英会話学校の案件のアカウントです。
広告用のランディングページ(LP)は3つあり、3つのLP(A、B、C)はサービスプランが異なり、ターゲット層や売上単価も異なります。
・サービスA:低単価(20~40万円ぐらいの売上)
・サービスB:中単価(40~100万円ぐらいの売上)
・サービスC:高単価(100万円以上の売上)
といったイメージです。
1キャンペーンに3つの広告グループが入っているだけの、これまたシンプルなアカウント構成です。
理想は3つのサービスをキャンペーンで分けて、各サービスのROASに合わせたCPAで運用したいのですが(実際はしていたのですが)、自動入札に必要なコンバージョン数との兼ね合いを考慮して、『1キャンペーンにまとめて「自動入札:コンバージョン単価の目標値」で運用する』を選択していました。
ちなみにGoogle検索広告の方は、Yahoo検索広告よりもコンバージョンデータが多いので、サービス毎にキャンペーンを別けて、キャンペーン毎に異なる「自動入札:目標コンバージョン単価」を使って運用しています。
Yahoo!検索広告のアカウントに話を戻しますが、この1キャンペーン3広告グループを「自動入札:コンバージョン単価の目標値」から「自動入札:コンバージョン数の最大化」に切り替えて運用しました。
比較項目1と2:成果とインプレッションシェア
Yahoo!検索広告の19年7月の広告費は「約77万円」でしたが、19年9月は「約111万円」と1.5倍ほど増えました。
しかし、コンバージョン数は減ってしまい、コンバージョン単価も悪化してしまいました。
クリック率は上がっているのですが、コンバージョン率が落ちています。また、クリック単価が高騰したため、7月よりも9月の方が悪い結果となりました。
「インプレッション損失率(予算)」は2.11%と、「自動入札:コンバージョン単価の目標値」で運用していた7月の1.53%より、若干増えたという結果でした。
比較項目3:検索クエリの傾向
実際のミニ勉強会の中では、検索クエリをお見せしましたが、ブログでは掲載できないので、「どのサービスの検索クエリか」を分かるようにいたしました。
※並びは「クリック数の多い順」です。
売上単価が高い「サービスC」の検索クエリでのクリックが増えました。
7月よりも9月の全体成果が落ちた理由はこれです。
ただ、Google検索広告側では、9月に「サービスC」の検索クエリ(Google広告は「検索語句」ですね。いろいろと名称を統一して欲しい…)が急激に増える動きは無かったです。
特に季節要因もないため、Yahoo!検索広告で「自動入札:コンバージョン数の最大化」を実施したら、なぜこのような結果になったのかは謎です…。
今回、CPAは悪化しましたが、クライアント様は激怒したと思いますか?
実はそうじゃなくて、逆に高単価なサービスCの検索クエリが増えたと喜んでくれました。
私が検索クエリをチェックしていて、1週目の時点で検索クエリの傾向が変わっていることを伝えたので、
『ならサービスCのLPを改善しよう』
『許容可能なCPAを見直そう』
と前向きな取り組みを実施できました。
検索クエリから何かを読み取るって、ほんと大切です。
比較項目4:Yahoo検索広告から流入したユーザーの興味関心
英会話学校の案件は、Googleアナリティクスの「購買意向の強いセグメント」で比較しました。
結果としては「「教育」のユーザー数が減り、「旅行」のユーザー数が増える」となりました。
サービスCの内容が、旅行も絡めたプラン(だから売上単価も高い)なので、今回のような結果になるのかな、といった感想です。
Yahoo!検索広告の自動入札「コンバージョン数の最大化」は良いの?悪いの?⇒そんな話をしたいわけじゃなくて…
紹介した2案件から見えてきた「自動入札:コンバージョン数の最大化」の傾向は
・インプレッション損失(予算)はあまり発生しない。
・「手動入札:拡張CPC」よりも成果が上がる
・「自動入札:コンバージョン単価の目標値」よりも成果は落ちる。
です。
ということは、最初は「手動入札:拡張CPC」で運用して、その後に「自動入札:コンバージョン数の最大化」で運用して、さらに「自動入札:コンバージョン単価の目標値」に切り替えればOKってことなのでしょうか?
Google広告のサポートや媒体担当者からも、同様なことを言われたりしませんか?
『「コンバージョン数の最大化」から「目標コンバージョン単価」に切り替えたら、コンバージョン数が20%増えました』
とか。
ここから先は主観的な部分が多いので、名もなきフリーランスの戯言として読んでください。
『アカウント構造は〇〇〇が良い。△△△はダメ!』
とか
『入札方法◇◇◇が成果が出る。◎◎◎は失敗する』
みたいな、1つのことに対して「良い、悪い」で決めつけちゃう考えってセクシーじゃないよね。
勝ちパターンを見つけることとか、再現性のあるやり方を求めることは大切だし、実際「これだけ抑えておけば70点は取れる」ってやり方もあります、使ってます。
でも、それに拘り過ぎている風潮がなんか、ね…。
案件の予算や特性も違うし、また運用者の考え方も違うし、媒体の機能だって日々進化してるから、1つのやり方に決めつないで、色々と試して欲しいなと。
リスティング広告の運用をシンプルに考えてみると
最近は「リスティング広告=自動入札」の話が多い気がしていて。(まぁ私も自動入札が大好きなんですけど)
リスティング広告の運用をシンプルに考えると
①誰に(検索クエリ、ターゲットユーザー)
②いくらの金額で(入札額、入札方法)
③どんなメッセージを(広告、ランディングページ)
④どれだけ表示すればいいか(広告費、インプレッションシェア)
の4つかな、と。
で、自動入札が関わる部分って、①と②なのかなと。
だから、自動入札を設定しただけで、全てが上手くいくって発想がセクシーじゃないよね。
自動入札あるある
自動入札をよく使っている人なら経験あると思うのですが、
「目標コンバージョン単価」を使ってみたら、成果や配信量が安定しない。
⇒コンバージョン数が足りなくて上手く動かない…
「コンバージョン数の最大化」を使ってみたら、クリック単価がドン引きするぐらい高騰。
⇒1日1万円の予算設定で、1クリック5,000円?2クリックで今日の配信は終了…
自動入札の設定を変えたら2週間は我慢して触らないでください。
⇒2週間って1月の半分なんですけど…。成果が悪かったときに「2週間ほど我慢したけどダメでした」なんて言えないよ…
コンバージョンが取れる検索クエリは決まってるから、手動入札(拡張CPC)の方が調整も楽。
例えばですけど、弁護士への離婚相談案件のような場合、
+弁護士 +離婚 +相談 ⇒入札@1,200円
+離婚 +相談 +費用 ⇒入札@600円
離婚相談 ⇒入札@100円
みたいな3キーワード登録と入札調整(あと広告文)で、十分成果は出せたりします。
案件は違いますが、事例1を手動入札で運用していたのも、同じような理由です。(「コンバージョン数の最大化」の方が、成果も上がりましたけど)
自動入札も案件が変われば動きも変わるので、1つの方法に拘らず色々と試して、その案件にあった入札方法を常に探し続けて欲しいな、と。
まとめ:余談とか
まず、Yahoo!検索広告の「自動入札:コンバージョン数の最大化」についての感想は、ズバリ『使いやすい!』です。
Google検索広告で「自動入札:コンバージョン数の最大化」を使い慣れてる方は、Yahoo!検索広告の「自動入札:コンバージョン数の最大化」を使うと、どうようの感触を受けるかと。
私はYahoo!検索広告の場合、通常の部分一致キーワードは使わない(絞り込み部分一致のみ)ので、検索クエリがブレにくかったからかもしれませんが、「運用工数×成果」の面で見ると、とても有効な自動入札だと感じました。
※現在はYahoo!検索広告でも”普通の部分一致”を上手く使う方法を模索中。
6年ぶりぐらいにYaoo!SSで部分一致を使ってみました。
ちゃんと検索意図が絞られた検索クエリーを拾っていました。
これからはYSSでも部分一致を使っていきます。— 田島佑哉(アミジャット)@中小企業診断士の勉強中 (@amijat_work) November 1, 2019
また、ミニ勉強会の最後にお伝えしたことは、『自動入札が良いか、悪いか』だけじゃなく
『好奇心をもって色々と試して欲しい』
『でも「自動入札で全てが上手くいく」と過信しちゃダメ』
でした。
今回の比較で8月の数字を出していないのは、8月の間に「コンバージョン数の最大化」が上手う動くように、アカウント構造を組み替えたり、入札を「手動に戻す⇒CV最大化にする⇒手動に戻す」をくりかえりたりと、アグレッシブルな運用状況だったからです。
『あの自動入札は前に失敗したから使わない』
とか決めつけず、クライアント様とコミュニケーションを取りながら、色々な運用方法を試して楽しんで欲しいです。
ちなみに私は「YDNの自動入札が上手く動く方法」にチャレンジ中です。
YDNの
・リタゲ3キャンペーン
・サチタゲ3キャンペーン
を手動入札から自動入札に切り替えてみた。ただ、動きがどう変わったか計測するアイデアが無い…。
特にYDNの自動入札はリーセンシーも最適化されるのかを調べたい。— 田島佑哉(アミジャット)@中小企業診断士の勉強中 (@amijat_work) November 4, 2019
YDNの自動入札は『。。。。』なことばかりでしたが、今後プラットフォームも変わって、裏側も色々変わる予感がするので、今のうちにYDNの自動入札の癖を掴んだ方がいいはず。
来年あたり「Yahoo!広告、打ち手大全」が出ると思う。ほんとに。
またこのブログでも、「YDNの自動入札の動きの違い」をご紹介できればなと。
自動入札への切り替えは勇気がいるよね
チャンレンジしての失敗はOK
自動入札を試したら成果が落ちた。
↓
「なぜ成果が落ちたのか」「今後どうするのか」をお客様に正直に伝えよう怠慢で失敗したはNG
・自動入札で全てが解決すると考えてる
・アカウントにログインせず声を聞かない
↓
問題外— 田島佑哉(アミジャット)@中小企業診断士の勉強中 (@amijat_work) October 26, 2019