hagakure構造を解説するページのアイキャッチ画像

「hagakure(ハガクレ)」とは、Google検索広告のアカウント構造の考え方の1つです。

「なぜGoogleが推奨してるの?」「どうして成果が変わるの」という方に向けて、アカウント構造によって広告の成果が変わる理由を解説します。




こんにちは、アミジャットの田島です。

Web広告(特に検索連動型広告)では、「Hagakure(ハガクレ)」という言葉がよく使われるようになりました。

『「Hagakure(ハガクレ)構造が良い」って聞くけど、仕組みがよく分からない』

って思うことはありませんか?

「Hagakure」とはGoogleが推奨するアカウント構造の話で、キャンペーンや広告グループをシンプルにまとめることで、

①広告の表示回数(IMP)を集約し、広告ランクの評価をされやすくる。

②広告テストの頻度を上げることができる。

により、成果を改善しやすくなります。

ただ、リスティング広告のアカウント構造の話は「1広告グループ1キーワードが効果的」など様々なやり方があり、決して

『キャンペーン構成を「Hagakure」にすれば成果が上がる』

とは言い切れません。

仕組みや本質を理解せず”仕組みだけを真似した施策”は失敗します。

私は「Hagakure」の考えが提唱され始めた2013年ごろから、Hagakure構造でリスティング広告の運用を行っています。

今回はHagakureが推奨されてる理由と、その仕組みについて、実際に運用している経験を元に仕組みやメリットなどを紹介します。

 

Web広告(リスティング広告)運用の基本的な仕組みや考え方について知りたい方は、別ブログ「リスティング広告とは?リスティング広告の仕組みをわかりやすく解説」をご覧ください。

 

はじめに

アドテクノロジーは日々進化しています。リスティング広告も然りです。

私がリスティング広告の運用に携わった2013年頃と比べても、リスティング広告の仕組みが、ガラリと変化している印象です。

その1つとして、「Hagakure(ハガクレ)構造」や「GORIN(ゴリン)」と呼ばれる、Googleが推奨するリスティング広告のアカウント構造の話があります。

この記事を読んでいる方も、どこかで「ハガクレ」や「ゴリン」という言葉を聞いたことはあるのではないでしょうか。

Hagakureとは、一言で説明すると「リスティング広告のアカウント設計をシンプルにする」という考え方です。アカウント設計をシンプルにすることで、「IMPが集約され、広告の評価が正しく行われる」「キーワード追加などの運用工数が減り、広告文テストのPDCAを回しやすくなる」といったメリットがあります。

リスティング広告のアカウント構造に正解はないとは承知していますが、実際にHagakureのアカウント構造を使ったリスティング広告の運用に大きなメリットを感じています。

この記事でもHagakure推奨の立場で紹介していきます。

Hagakureの仕組みについて、今までの経験と知識をもとに記載しますが、なるべくGoogleが公表している情報を引用しながら、間違った情報を与えないように解説いたします。



Googleが推奨するHagakureとは?

Hagakureは、リスティング広告のアカウント構造の作り方についての話です。

リスティング広告の成果は、キーワードや広告などをどう設定するか、アカウント設計が大きく影響します。

Googleが推奨するHagakureの考え方は、アカウントをできるだけシンプルに設計することで、極端に言えば『リンク先URLが1つなら、キャンペーンは1つ、広告グループも1つでOK』ということです。

GoogleはHagakureを推奨する理由として、アカウント構造をシンプルすることで

①広告の表示回数(IMP)を集約し、広告ランクの評価をされやすくる。

②広告の追加やテストの頻度を上げることができる。

といったメリットがあります。

しかし、今までのリスティング広告のアカウント設計の考え方は、キーワードに合わせてキャンペーンや広告グループを細かく分けて運用することが基本でした。

Googleが推奨するHagakureは、今までのアカウント設計とは真逆の考え方だったため、今でもリスティング広告運用代理店の中には「ハガクレってほんとに効果的なの?」という意見もあります。

この記事ではHagakureのメリットである

・IMPが集約して広告の品質が正しく評価されやすい。⇒自動入札がより効率的に動く。

・運用工数が減り、PDCAを早く回せる。

について、「1広告グループ1キーワード」に代表される昔ながらのアカウント構造と比較しながら、具体的に紹介できればと思います。

また、Hagakureでアカウントを作った場合のデメリットも紹介します。



リスティング広告のアカウント構造

Hagakureはリスティング広告のアカウントの作り方についての概念です。

まず、そもそものリスティング広告のアカウント構造についてまとめます。

アカウント構造を簡単に説明すると、「アカウント」という大きなフォルダーの中に、「キャンペーン」⇒「広告グループ」という順にフォルダーを作ります。

そして「広告グループ」の中に「キーワードと広告文」を格納していきます。

「キャンペーン」や「広告グループ」は、それぞれ設定できることが異なるため、役割も異なります。

アカウントの役割

「キャンペーン」「広告グループ」などをまとめるものです。基本的に1企業につき1アカウントとされていますが、サービス内容によっては複数のアカウントを使用することもあります。

アカウントでは企業情報や支払い情報などを管理します。

キャンペーンの役割

アカウント構造の中で最も大きい階層です。キャンペーンでは配信する地域や1日に使う予算を管理することができます。

商品やサービスが異なる場合や、地域によって使う予算を分ける場合など、キャンペーンを分けて作ります。

広告グループの役割

キャンペーンの配下に作られる階層です。

広告グループの役割は、キーワードと広告を1つにまとめることです。広告グループでまとめられたキーワードに紐づいて、広告が表示されます。

キーワードの役割

登録したキーワードを元に、ユーザーが検索したときに広告が表示されます。

キーワードにはマッチタイプと呼ばれる、検索キーワードとどの程度一致していると広告が表示されるか範囲を決めることができます。

広告の役割

広告グループにセットしたキーワードに紐づいて、検索結果に表示されます。広告文ではタイトル、説明文、リンク先URL、表示URLなどを設定します。



「Hagakure(ハガクレ)構造」のポイント

多くのリスティング広告運用代理店が、昔から効果的だと思って作っていたアカウントの設計方法が、Googleアドワーズのロジックの進化により、実は効果的ではない(逆に効果を悪くしている)という点が多く出てきました。

そのため、2013年頃からGoogleがリスティング広告運用代理店や広告主に対して、「このようなアカウント設計にして、こんな運用をすると効果的ですよ」というアカウント構造を推奨していきました。

この推奨プロジェクトのコードネームが『Hagakure』と呼ばれていて、Googleが推奨するアカウント構造のこともHagakureと呼ばれるようになりました。

また、同じころにGoogleが代理店やクライアントに向けて、「AdWrodsよくある7つの誤解」という冊子を配布しています。

こちらはHagakureの基本概念をシンプルにまとめたものです。

「AdWrods よくある7つの誤解」の内容は、サイト「ヤマダコウタドットコム」様で全文を記載されています。

この当時、私はリスティング広告の運用代理店にいて、Googleの方と協力して社内のアカウントをHagakure構造に移行するプロジェクトに携わっていました。

Googleの担当者様からHagakure仕組みを教えていただいたときは、『今まで社内で教わってきたリスティング運用の概念と全く違う』と驚きました。

社内でも実験的に、月額数千万円以上のリスティング広告案件のアカウント構成をHagakure構造にガラッと変えて、数値がどうかわるかテストしました。

600以上あった広告グループを10グループに統合、70,000以上あったキーワードも500キーワードほどに絞るという、大がかりなアカウント構造の変更でした。

Hagakureへ移行した結果、正しいやり方を踏襲したうえでHagakureのアカウント構造で運用したほうが、成果も上がることが確認できました。

そのため、社内の全アカウントをHagakureに移行するプロジェクトが進みました。

私もそれ以来、リスティング広告はHagakureのアカウント構成で運用しています。



昔のアカウント構造の特徴

登録キーワードの粒度に合わせて、キャンペーンや広告グループを細かく分けたアカウント構造です。

入札調整など手運用で行うことを前提に考えているため、キーワードの掛け合わせやマッチタイプなどの単位で、アカウント構造を細分化している点が特徴です。

2012年頃からは、キーワードと広告文の関連性を高めることに重点をおいた「1広告グループ1キーワード」というアカウント構造が注目されました。

昔のアカウント構造の特徴をまとめます。

キーワードに合わせた広告文を設定できる

広告は、同じ広告グループの中にセットされたキーワードと紐づいて表示されます。

1つの広告グループに複数のキーワードと広告を設定した場合、どのキーワードでどの広告が表示されるかはランダムで決まります。

ただ、検索キーワードによって、ユーザーが探したい情報は異なります。

例えば、法律事務所のリスティング広告で言えば、検索キーワード「法律事務所 池袋」と「法律事務所 女性弁護士」では、検索したユーザーがどんな法律事務所を探しているか、目的が異なることが明らかです。

この場合、キーワードに合わせた訴求の広告文を表示させたほうが、成果もよくなるはずです。

そのため、広告グループをキーワードごとに細かく分ることで、キーワードに合わせた広告を設定することができるため、広告グループを細かく分けるアカウント設計が良いと考えられていました。

また、キーワードの品質スコア(クリック単価に影響する点数みたいなもの)は、広告のクリック率が大きく影響します。

この2つの点から、「1キーワードごとに広告グループを分けて、広告文も全てキーワードに合わせて設定すれば、品質が良くなり成果が上がる」という概念で生まれたアカウント構造が、「1広告グループ1キーワード」です。

「1広告グループ1キーワード」のアカウント構成が良い、とノウハウとして公開している代理店もまだまだ多くあります。

私は「1広告グループ1キーワード」でのリスティング広告運用を試したことがないため、肯定も批判もいたしません。

キーワード群単位で入札をコントロールできる

1つ1つのキーワードの入札を手動で管理することは難しいです。

そこで、広告グループをキーワード群で分けて、広告グループ単位で入札を管理することで、手動での運用も行いやすくなります。

また、マッチタイプ別に広告グループを分けることで、マッチタイプに合わせて入札の強弱をつけることが可能になります。

完全一致のキーワードは高めの入札でピンポイントにクリックを集め、部分一致のキーワードは低めの入札で検索クエリを拡張させて拾うといった、マッチタイプの入札調整によって「検索クエリにフィルターをかける」ような運用が可能です。

一目でキーワード群の数値傾向を把握できる

キーワード群で広告グループを分けることで、キーワードの属性ごとの成果をすぐに把握することができます。

キーワードの組み合わせによって、検索ユーザーの意図も変わりますので、キーワード群を広告グループごとに分けることで、一目で「比較系キーワード群の成果が良い」と判断することが可能となります。



昔のアカウント構造の問題点

昔のアカウント構造は、特徴を見てもキャンペーンや広告グループを細分化することで運用も細かく行うことでき、何も問題点はないように思えます。

ただ、昔のアカウント構造のようにキャンペーンや広告グループを細かく分けることによって、そのメリットよりもデメリットの方が上回るようになりました。

そのため、GoogleもHagakureというアカウント構造を推奨するようになりました。

昔のアカウント構造(細分化したアカウント構造)で運用した場合のデメリット、問題点をまとめます。

IMPが分散し広告の品質が上がりにくい

広告の品質は、広告のクリック率と、キーワードと広告の関連性が影響しますが、それだけではなく「広告の表示回数」も重要な指標になることがGoogleから発表されています。

広告の「質(クリック率)」だけではなく、「量(表示回数)」の両方がなければ、評価されないということです。難しい言葉で「広告の統計的有意差による評価」などと呼ばれたりします。

つまり、「どんなに広告のクリック率が高くても、表示回数が少ないと統計的に正しいかどうか判断できないから、評価もしないよ」ということです。

では、この表示回数はどれだけあればいの?という話になりますが、広告グループ単位で「週間1,000IMP以上」が目安になるようです。

昔ながらのアカウント設計や「1広告グループ1キーワード」の設計で、広告グループを細かくしすぎるとそもそもの広告グループのIMPが減ってしまいます。

せっかくキーワードに合わせて広告文を変えてクリック率を高めても、Googleアドワーズのロジック上では、評価されにくい(広告の品質が改善しにくい)という結果になってしまします。

アカウント内で競合し「広告ランクによるシェア損失」が発生

ユーザーが検索したときに、どの広告が表示されるかのオークションは、『“自アカウントも含めた”世界中の広告グループ間で競われる』という仕組みです。

“自アカウントも含めた”がポイントです。

キーワードごとに広告グループを分けすぎると、キーワードの組み合わせによっては、自アカウント内の広告グループ同士で広告の表示機会が分散します。

下記の図のように、「歯 治療」「歯医者 治療」のようなキーワードを、掛け合わせやマッチタイプによって広告グループを分けていた場合、『歯医者 治療費』で検索すると、複数の広告グループの広告に、表示機会が発生します。

全ての広告グループの広告が表示されるのかというとそうではなく、実際には自アカウント内で広告ランクが最も高い広告だけが表示されます。

自アカウント内での競争に勝った広告のみ表示対象となり、他社の広告と競って掲載順位などが決まり、検索結果に広告が表示されます。

表示されなかった広告は、キャンペーンの「広告ランクによるシェア損失」の数値に含まれます。

「広告ランクによるシェア損失」が多く発生するほど、その広告グループに対する広告の表示回数は減っているということです。

そのため、その広告グループに含まれている広告の品質が正しく判定されにくいとう悪循環になってしまいます。

・アカウント構造を複雑にするほど「広告ランクによるシェア損失」が増える。

・「広告ランクによるシェア損失」が多いほど、広告の表示機会を失う。

・広告の品質も正しく評価されにくい。

アカウント構造をシンプルにして、自アカウント内での「広告ランクによるシェア損失」を発生させないようにすると、広告表示の機会も分散しないので、キーワードの品質も正しく評価されやすくなるというのが、Hagakureの概念です。

アカウント構造をシンプルにして、IMPを集約しながら広告を自アカウント内で競合しないようスムーズに表示させることで、広告の品質が正しく評価されて、結果的に成果も上がりやすい、という考えです。

キーワード追加や広告文のABテストなどに工数がかかる

広告運用で大切なのは、入札を調整するだけでなく、「クエリーをキーワードとして追加する」「除外キーワードを追加する」「検索クエリの意図に合わせた広告を作る」を行い、ユーザーの検索ニーズに沿った広告を配信していくことです。

アカウント構造が細かいほど設定にかかる工数も増えるため、キーワード追加や広告文の変更などが停滞しやすくなります。

<例>
昔ながらのアカウント構造の広告グループは、「マンション」「マンション 購入」「マンション 新築」などのキーワードが別々の広告グループに入っています。

アカウントにキーワードを登録することで、そのキーワードと完全一致した検索クエリでの品質スコアが把握できます。

クエリーを確認すると「新築マンション 購入」でコンバージョンが多く発生しているので、新たにキーワード「新築マンション 購入」を登録しようと考えたとき、アカウント構造が複雑になるほど、どの広告グループにキーワードを追加すればよいのか迷ってしまい、結局「新築マンション 購入」のキーワード登録を後回しにしてしまいます。

シンプルな「Hagakure(ハガクレ)構造」の方は、「マンション」「マンション 購入」「マンション 新築」が1つの広告グループに入っています。

これなら広告ループは1つしかないので、キーワード「新築マンション 購入」を迷わず直ぐに追加することが可能です。

Hagakureの考え方、特徴

昔ながらの細分化されたアカウント構造とは逆で、アカウント構造をシンプルにしてIMPを集約するという考え方です。

IMPを集約することで、キーワードの品質も正しく評価されやすくなり、運用のPDCAサイクルも早くなります。

また、自動入札機能やコンバージョンオプティマイザーといった機械学習による入札も機能しやすくなります。

IMP集約型のアカウント設計

広告の品質は、広告のクリック率(質)と表示回数(量)が重要になるため、キャンペーンや広告グループは集約します。

Googleの推奨では「1つのリンク先URLに対して、1広告グループ」が理想としています。

サイトのディレクトリーマップに合わせたアカウント設計です。

しかし、同じリンク先URLでも「新宿 英会話」で検索したときの広告文は『新宿の英会話教室なら』、「品川 英会話」で検索したときの広告文は『品川の英会話教室なら』といったように、キーワードに合わせて広告文を変えたいこともあります。

昔のアカウント構造では、「広告グループ:新宿_英会話」「広告グループ:品川_英会話」のように、広告グループを分けて広告文を変えていました。

しかし現在はGoogleアドワーズとYahoo!スポンサードサーチに「広告カスタマイザー」という機能がリリースされており、この機能を利用することで、同じ広告グループでもキーワードに紐づけて広告文を変えることが可能となりました。

キーワードに合わせて広告文を出しわけることが目的であれば、「1広告グループ1キーワード」ではなく、「1広告グループにキーワードをまとめて登録し、広告カスタマイザーで出しわける」の方が、媒体のロジックにもマッチしています。

また、検索ボリュームが少ないキーワードを登録しても広告は表示されません。

どれだけの数のキーワードを入れて、どう広告文を出しわけるかは、検索ボリュームや予算に合わせて正しく考える必要があります。

運用工数を減らし、PDCAの頻度を上げる

Hagakureの重要なポイントはここです。

アカウント構造をHagakureに変えても、日々の運用でキーワードの追加や除外、広告文の差し替えを行って、より最適なアカウント構成に作り上げていかなければ成果は出ません。

これは自信をもって断言できます。

「Hagakureを試したけど効果が出なかった」と言われる方は、アカウント設計を変えただけですぐに成果が出ると思われていた方が多いのかと思います。

Hagakureの重要なポイントは、キーワードの追加や除外、広告文の差し替えなどの『広告運用』が高い頻度で行えるようになることです。

『広告運用』を行わなければ、いくらアカウント設計だけを変えても成果は改善されません。

アカウント構造をシンプルにすることで、今までキーワードの入札にかけていた運用負荷を広告文のテストに使うことができるため、成果も上がります。

リスティング広告で「広告文」はとても重要です。

実際に検証したところ、キーワードの入札変更に運用工数をかけるより、検索クエリのニーズに合わせた広告文を作り続けた方が、成果が改善する傾向です。

詳しくは【Googleアドワーズ】広告文で検索クエリが変わる?SEMカフェで学んだ3つのポイントを検証をご覧ください。

コンバージョンオプティマイザー(スマート自動入札)が機能しやすい

コンバージョン数値が増えたら、コンバージョンオプティマイザーなど自動入札機能といった機械学習(AI)を活用していきます。

Hagakureにすることで、広告の表示回数やコンバージョン数といったデータが1つのキャンペーンや広告グループに集約されるので、機械学習(AI)も機能しやすくなります。

要点:アカウント構造を単純化し、広告グループ レベルに情報を集約化
理由:広告グループ内の十分な情報量を蓄えることで自動化がより正確に機能し、配信効率が上がるため

引用元
Google が理想とする AdWords 検索広告の最適化 -GORIN プロジェクト-

繰り返しになりますが、AIを活用することで人間の運用工数を「広告文の練り上げ」に注力できることがポイントです。

コンバージョンオプティマイザー(スマート自動入札)と広告文についての事例は、「【Google広告の自動入札】月額10万円のアカウントで成果が改善した事例」で紹介しています。



Hagakureにもデメリットがある

GoogleがHagakureを推奨しているにも関わらず、未だに昔ながらのアカウント構造で運用している方が多いのは、デメリットもあるからだと思ます。

私がHagakureで運用していて、難しいなと感じる点、デメリットを記載します。

部分一致キーワードのコントロール

マッチタイプ部分一致のキーワードの使い方が難しいと感じます。

私の場合、部分一致キーワードの役割は「登録していないキーワードを部分一致の拡張で補って、低CPCでクリックを拾いながら、クエリーの中からお宝キーワードを見つける」というイメージです。

マッチタイプ別に広告グループを分けていれば、部分一致キーワードの広告グループの入札を下げることで、一括で広告グループ内の部分一致キーワードの入札を下げることができます。

1つの広告グループで複数のマッチタイプを登録している場合、キーワード単位で部分一致のみピックアップして、1キーワードごと入札を下げる必要があります。

手動で入札するのであれば、まだ上記の方法で解決できるのですが、自動入札機能を利用した場合、キーワードを個別に入札調整することができません。

機会学習がキーワードごとの入札調整をしてくれるのですが、どうしても部分一致キーワードを登録していると、部分一致キーワードにIMPやクリックを取られてしまいます。

昔ながらのアカウント構造をHagakureに変えて失敗する原因の多くが、「部分一致キーワードの暴走」ではないかと思います。

そのため、私は基本的に、「部分一致キーワードは使わずに、2トークン以上の絞り込み部分一致キーワード(「+ジーンズ +セール」のような、2つのキーワードの組み合わせ)を使うで設計しています。

部分一致キーワードを使って、クエリーからお宝キーワードを見つけたい場合は、「1日だけ部分一致キーワードを配信する」という運用をしています。

細かなレポーティング作業

どうしても1つの広告グループにキーワードをまとめてしまうと、キーワード群ごとの傾向を見ることが難しくなります。

Googleアドワーズなら、キーワードに「ラベル」を付けて確認することもできますが、キーワード登録のたびにラベルを付けていくのも大変です。

また、Yahooスポンサードサーチには「ラベル」機能がないので、対応が難しいです。

アカウントを設定するときは、事前にクライアント様と本当に確認すべきキーワード群の粒度をすり合わせて設計に反映します。

例えば、『引っ越し』の案件では、検索キーワード「引っ越し 単身」と「引っ越し 5人家族」では、発生する売り上げ単価も「引っ越し 5人家族」の方が高いはずです。

そのためROASを元に考えると、「単身」と「家族」で目標CPAも変わります。

この場合は、キャンペーン自体を「単身」と「家族」で分けた方が最適です。

キャンペーンで分けることで、ただ単に属性の数値を見ることだけなく、コンバージョンオプティマイザーの目標CPAをそれぞれのキャンペーンに合った数値に設定することができます。

これからのアカウント設計

アドテクノロジーが進化する以上、リスティング広告の運用者は、広告媒体のロジックを理解した上で、アカウント設計を考える必要があります。

SEOも昔は「外部リンクをいかに集めるか」が重要視されていました。

しかし、ペンギンアップデートやパンダアップデートによってSEOのトレンドが変わり、今では「むやみな外部リンクはペナルティを受けるリスクが高いので、コンテンツの質を上げること(内部SEO)に力を入れるべき」と変わっています。

テクニックありきではないですが、リスティング広告もSEOと同様に、媒体のロジックのトレンドに合わせる必要はあるかと思います。

SEOもリスティング広告も、同じGoogleのサービスですしね。

AIを使うことを前提にした考え

今の時代、飛行機や船の操縦は、オートパイロットなどの自動操縦で行われています。

パイロットや航海士の仕事は、ハンドルや舵を握ることよりも、「自動操縦のシステムが正しく動いているかのチェック」「自動操縦が正しく動くように、天候などのデータを分析してシステムを設定する」に変わっています。

リスティング広告も、Googleが「AIファースト」を宣言していることからも、コンバージョンオプティマイザーなどの自動入札機能は、今まで以上に進化して精度も高まるはずです。

リスティング広告の運用者も、手動でキーワードを入札調整することよりも、自動入札が上手く機能するようなアカウントを設計できるか、が求められるのではないかと思います。

もちろん、自動入札機能があるからといって、「リスティング広告運用の基礎(ロジックツリーなど)は覚えなくていい」というわけではないです。

パイロットも離陸、着陸は手動で行いますし、航海士も海図は読めないといけません。

私もコンバージョンオプティマイザーが上手く機能していないときは、手動入札で運用しています。

手動入札で運用しているときは、GoogleのコンバージョンオプティマイザーのAIに、

『こんな感じで入札調整するとコンバージョンが取れるよ~。早く覚えて上手に機能してね~』

と教えている感覚です。

海外ドラマ「パーソン・オブ・インタレスト」のフィンチになった気分です。

マイクロコンバージョンの活用

上でも書きましたが、今後の広告運用はコンバージョンオプティマイザーなど自動入札機能といった、AIの活用が重要だと思っています。

人間の目で管理画面から確認できること、調整できることに限りがあります。

また、人間の知能(私の知能)で色々考えられることにも限界があります。

媒体のコンバージョンオプティマイザーは様々なシグナルを元に、検索クエリーが発生するたびに入札を調整します。

AIに任せられることは、AIに任せましょう。AIファーストです。

コンバージョンオプティマイザーなど自動入札機能が上手く機能するためには、AIが学習するために必要なIMPやコンバージョン数などデータを集約することです。

ただ、業種や予算によってはコンバージョン数が少なく、コンバージョンオプティマイザーなどの自動入札機能を使うことができないこともあります。

そこで、AIの学習に必要なコンバージョン数を確保するため、「マイクロコンバージョン」の活用ノウハウが必要かと感じます。

「マイクロコンバージョン」とは、「購入完了ページ」などの最終コンバージョン以外にも、中間コンバージョンを設定することです。

例えば、「フォーム入力画面に到達した」や「価格表のページを見た」など、コンバージョンに繋がるまでの導線の一部を、中間コンバージョンとして設定します。

こうすると全体のコンバージョン数が増えるため、コンバージョンオプティマイザーなど自動入札機能を活用することが可能となります。

詳しくは「【リスティング広告】マイクロコンバージョン(中間コンバージョン)とは?効果的な活用方法」をご覧ください。

キーワードや広告文に対する運用工数の考え方

人間は人間にしかできないことをやりましょう。

キーワードの追加や除外、広告文を考えるとか。(数年後はこれもAI任せになっているかもしれませんが。)

今までは、「キーワードを広告文の中に含める」の考えで、初期設定だけしてABテストや差し替えを後回しにしていることも多かったかもしれませんが、Hagakureにするメリットは、広告のABテストの高速化です。

つまり、広告文の訴求案は人間が検索クエリの意図やユーザー像をしっかりと考えて、どんどんテストを行う必要があります。

広告文のABテストが早い頻度でできるから、Hagakureで成果がでやすいのであって、これをやらなければ成果は出ないです。

広告に対する考え方も見直しが必要だと思います。キーワード目線ではなく、検索ユーザー目線の訴求ですね。

リスティング広告における広告文の作成方法については、【リスティング広告】ユニコーンが見つかる!?効果的な広告文を作成するコツをご覧ください。

Yahoo!もシンプルなアカウント構造を推奨している

HagakureはGoogleが推奨するシンプルなアカウント構造のことですが、Yahoo!スポンサードサーチでも「アカウント構造をシンプルにしましょう」と推奨しています。

Yahoo!スポーンサードサーチでは、2つのポイント

1、複数の広告グループに同じキーワードは登録しない
2、同じ訴求内容を一つの広告グループにまとめる

をあげ、「Webサイトのカテゴリ=広告グループの分類」と、Hagakureの考えと同様にアカウント構造をシンプルにする啓蒙活動を行っています。

また、YDNについてもアカウント構造をシンプルにすることを推奨しています。

今までYDNは、細かな入札調整をするためには、ターゲットごとに広告グループを分ける必要がありました。

しかし、2017年10月より「入札価格調整機能」という機能がリリースされたことにより、広告グループを細分化しなくてもターゲット毎に入札を調整することが可能となりました。

そのため、YDNでも「アカウント構造をシンプルにすることがベスト」と、その理由や仕組みや公開し始めています。

Googleアドワーズ(GDN含む)も、Yahoo!スポンサードサーチ(YDN含む)も、データを集約することで、

・広告の評価が正しく行われるようにする。
・機械学習を活用しやすくする。
・運用負荷を軽減して必要なPDCAに工数を使う。

という考え方が主流となりつつあります。



実際にHagakureで運用したアカウント数値

弁護士事務所の「法律相談」のGoogleアドワーズについて、広告アカウントの管理画面数値を掲載します。

キャンペーン数値


リスティング広告を掲載していた法律分野は「相続」「遺言書作成」「労働問題(残業代請求)」です。

検索連動広告のキャンペーン数もLPの数に合わせて5本のみです。(「労働問題(残業代請求)」はGSPを実施しています。)

広告グループも1キャンペーンにつき1広告グループです。

キーワードごとの広告文に出し分けは、地域名やサービスの詳細(労働問題なら「残業代請求」「不当解雇」「労働問題」「パワハラ」など)を、広告カスタマイザーを使って行っていました。

ポイントは「検索広告のインプレッションシェア」「広告ランクのシェア損失」「完全一致のインプレッションシェア」です。

キーワードの入札はコンバージョンオプティマイザーに任せて、私はキーワードの追加、除外、停止を繰り返して、「完全一致のインプレッションシェア」を上げることを目指す運用を行っていました。

「完全一致のインプレッションシェア」が高まるということは、検索クエリーから広告表示がスムーズに行われているということなので、必然的に「検索広告のインプレッションシェア」も高まるようです。

その点、相続キャンペーンは、まだまだ改善の余地がありますね。

キャプチャー画面では、月額予算の約340万円に対して、コンバージョンが693件となっております。

このままの数値だと、CPAは5,000円ほどですが、このコンバージョン数値はマイクロコンバージョンを設定して計測しているので、実際の相談件数よりも多くカウントされています。

実際の相談件数ベースでのCPAは18,000円ほどです。

他事務所ではCPA2~3万円を目標にしているところが多かったので、業界平均よりCPAを低く抑えて運用できているといった感じでしょうか。

ただ、CPA以上に、リスティング広告の運用工数が、Yahoo!スポンサードサーチやYDN、Facebook広告となどと合わせても、1日30分~1時間程度しか発生していなかったので、インハウス運用としては成功していました。

私の業務はリスティング広告の運用よりも、サイトのディレクションやライティングが多かったです。

おかげで法律知識に詳しくなりました。

キーワード数値


指名キーワード以外でも、「労働問題 弁護士 無料相談」といったロングテールのキーワードでも、品質スコア10を獲得できていました。

リスティング広告の運用をスタートしたときのキーワードの品質スコアは5~6でした。

キーワードの追加、除外、停止を、6か月ほど繰り返して、品質スコアの数値も上がっていった感じです。

品質スコアが広告ランクに直接影響するわけではないですが、運用の目安としては良い傾向だと思います。

キーワード分布


登録していたキーワードは、アカウント全体で約800キーワードほどです。

今までの経験上、キーワードを多く入れすぎるとコンバージョンオプティマイザーが上手く機能しないため、必要なキーワードだけに絞っていました。

2トークン、3トークンのキーワードで、コンバージョンに繋がるor品質スコアが高いキーワードです。

キーワードの品質スコアを上げることが目的の運用というよりは、Hagakure構造でキーワードを精査しながら運用すると、必然的にコンバージョンが取れるキーワードの品質スコアも上がっていくという印象です。



Hagakure構造についてのまとめ

冒頭でも書きましたが、アカウント構造に正解はないと思っています。

また、アカウントをHagakure構造に代えても、その後の運用(「検索クエリーの動きを把握して、広告文を追加する」など)のPDCAを実施しなければ、成果は上がりません。

「Hagakure」について長々と書きましたが、私自身もリスティング広告の運用を日々勉強中です。

リスティング広告のロジックや機能は日々進化していますので、今推奨されているやり方がこの先も有効だとは限りません。

「Hagakure」に限らず、新しい手法や機能がリリースされたら、今までのやり方に固執せず試してみることが大切だと考えています。

『重要なのは、疑問を持ち続けること。知的好奇心は、それ自体に存在意義があるものだ。』Byアインシュタイン

最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。この記事が役に立ったなと思ったらSNSでシェアしていただけるとうれしいです。