リスティング広告は機械学習(自動入札)の活用が進んでいます。
特にGoogle広告は「スマート自動入札」の精度が高く、人の手による入札調整より成果が上がる印象です。
ただ一般的に、自動入札を活用するためには『コンバージョンデ数が必要』というイメージもあり、月額予算が少ない案件では自動入札の活用を諦めてしまうケースも見受けられます。
『少額案件=自動入札は利用できない』と思われがちですが、やり方次第では少額アカウントでも自動入札の活用で、絶大なパフォーマンスを発揮します。
今回は月額10万円ほどの少額アカウントでも、自動入札を導入してコンバージョン数が増えた事例を紹介します。
リスティング広告の運用は機械学習(自動入札)に任せることがトレンド
ひと昔前までのリスティング広告の運用は、沢山のキーワードを登録して、運用者が常に管理画面を見ながら入札を調整する方法が主流でした。
今でも「登録キーワード数は〇万件以上」とうたっている運用会社もありますが、それぐらい「多くのキーワードを登録して、人間の手で入札を変える」という運用が成果につながると考えられてきました。
しかし現在はアドテクノロジーやAI(機会学習)が進化しており、リスティング広告の運用も人間の手で入札を調整するよりも、AI(機械学習)に入札調整を任せた方が成果も出やすい時代となりました。
もちろんAI(機会学習)の精度もまだまだ発展途上ですので、「手動で入札した方が成果が出る」とうケースもあります。
運用者によっても「入札は機械学習に任せるべき」と「運用者が手動で運用したほうが良い」と意見も分かれます。
私個人としては、少なくとも「機械学習による入札」の動きは、人間の運用者では太刀打ちできないと感じる部分が多くあり、可能な限り「自動入札」を活用したほうが良いと考えています。
Google広告の「スマート自動入札」とは
「スマート自動入札」とは、Google広告の自動入札の一部で、「シグナル」と呼ばれる様々なデータを活用してコンバージョン数の最適化を行います。
コンテキストに基づくさまざまなシグナル
オークションごとの自動入札機能では、入札単価の最適化の際にさまざまなシグナルが考慮されます。
シグナルとは、個々のユーザーやオークション時のコンテキストを特定できる属性のことで、端末や地域など、手動の入札単価調整に利用できる属性のほか、AdWords スマート自動入札固有のシグナルとその組み合わせが該当します。
この「シグナル」と呼ばれる、ユーザーの属性や利用環境、過去の検索状況といった、Googleにしか把握できない様々なデータを活用します。
また広告が表示されるタイミング毎に最適化が行われます。
どうしても人間の手による入札調整が、機械学習による入札に太刀打ちできないと感じる理由です。
少額アカウントでも自動入札は効果的
機械学習による入札(自動入札)が上手く機能するためには、「データ量」が重要です。
広告予算が少ないと、広告表示回数やコンバージョン数も少なくなり、自動入札も上手く動かないケースもあります。
しかし以下のポイントに注意することで、少額予算の広告アカウントでも自動入札によってパフォーマンスを最大化することが可能です。
2:狙うターゲット(検索語句)を見極める。
3:より多くの広告文を作成する。
データ集約型のアカウント構造で機械学習を最大限に動かす
アカウント構造を単純化し、広告配信のデータを1つのキャンペーン、広告グループに集約することで、自動化がより正確に機能し、配信効率が上がります。
アカウント構造については、「hagakure(ハガクレ)構造」とは?リスティング広告のアカウント設計で色々と書いています。
入札調整よりも大切な「広告文」
広告運用では「手動入札」と「自動入札」のどちらを使うかも大切ですが、それと同様に『どれだけ多くの広告文を作成できるか』が重要です。
もし1パターンの広告文しか作成していないのであれば、「手動入札」でも「自動入札」でも大した成果は出ないです。はい。
なぜならば、リスティング広告のオークションは「広告文の良し悪し(広告ランク)」で勝負します。
オークションの仕組みは次のとおりです。
1、ユーザーが検索を行うと、その検索内容と一致するキーワードが設定された広告がすべて検出されます。
2、検出された広告のうち、別の国をターゲットとする広告やポリシー違反に基づいて不承認となっている広告など、対象外の広告は無視されます。
3、残った広告の中で広告ランクが十分に高いものだけが表示されます。広告ランクとは、入札単価や広告の品質、広告ランクの最低基準、ユーザーの検索状況、広告表示オプションやその他の広告フォーマットの見込み効果に基づいて算出されるスコアです。
引用元:Gogle広告「オークション」
キーワードに対する入札額も大切ですが、それ以上に「広告文がイケているかどうか」が重要です。
私の大好きな「ドラゴンクエスト」で例えるなら、パーティーへの指示が『めいれいさせろ(手動入札)』か『ガンガンいこうぜ(自動入札)』のどちらを選んだとしても、そもそもパーティーメンバーのレベルが「1」では勝てないのと同じです。
広告文に関する記事は、【リスティング広告】ユニコーンが見つかる!?効果的な広告文を作成するコツをご参考ください。
月額10万円の広告アカウントで「スマート自動入札」が成功した事例
月額10万円ほどの広告費でGoogle広告を実施しているBtoB商材の案件で、「スマート自動入札」を活用して成果が改善した事例を紹介します。
改善前のアカウント構成
私が着手する前は、某SEM広告代理店が運用していた広告アカウントです。
多くの登録キーワードをピックアップして、複数のキャンペーンや広告グループに分けて作成するアカウント構造です。
またデバイス別でキャンペーンを別けたりと、合計で「19キャンペーン、21広告グループ、900キーワード」といった細かなアカウント構成でした。
広告文も1広告グループに1パターンのみという、成果が出ないアカウントによくあるケースでした。
改善前の月間数値
・広告予算:44,608円
・コンバージョン:5件
・CPA:8,538円
改善1ヵ月目:キャンペーン構成を統合
まずは無駄なキャンペーンは止めて、登録キーワードも精査しました。
検索広告はクライアント様からの要望もあり、「指名キーワード」「ビッグキーワード」「ミドルキーワード」「動的検索広告」の4キャンペーンで運用していました。
ディスプレイはリターゲティング広告を実施しています。
1ヵ月目の数値
・広告予算:124,086円
・コンバージョン:9件
・CPA:13,684円
改善2ヵ月目:キャンペーン構成をさらに統合して「コンバージョン数の最大化」を適用
4つに分けていた検索広告キャンペーンを1つに統合しました。
「ビッグキーワード」「ミドルキーワード」「動的検索広告」の3キャンペーンのキーワードを精査し、「指名キーワード」の1キャンペーンに統合させました。
1つのキャンペーンにまとめることで、コンバージョンのデータを1キャンペーンに集約させて、スマート自動入札の「コンバージョン数の最大化」を適用しました。
「コンバージョン数の最大化」による入札について
「コンバージョン数の最大化」はスマート自動入札戦略の1つで、予算全体を使おうとしながらキャンペーンのコンバージョン数を最大化できるように入札単価を自動的に調整します。高度な機械学習によって、オークションごとに入札単価が自動的に最適化されます。
引用:Google広告ヘルプ
「コンバージョン数の最大化」は、キャンペーンの予算に合わせて入札調整が行われるので、1日あたり数千円の予算といった少額アカウントで利用しやすい自動入札タイプです。
2ヵ月目の数値
・広告予算:89,477円
・コンバージョン:7件
・CPA:12,504円
改善3ヵ月目:広告文を「10パターン以上」追加
1つのキャンペーンで「コンバージョン数の最大化」を実施しつつ、様々なパターンの広告文を追加していきました。
この時は、合計13パターンの広告文を設定していました。
広告文を追加してから、コンバージョン数も増えだしました。
3ヵ月目の数値
・広告予算:85,551円
・コンバージョン:12件
・CPA:6,837円
改善4ヵ月目以降:自動入札が進み成果が拡大
成果の悪い広告文を止め、成果の良い広告文をベースに新しい広告文を作成して追加していきました。
入札調整は引き続き「コンバージョン数の最大化」にお任せしており、この時期からは、キーワードの追加や除外設定はたまにしか行っていません。
4ヵ月目の数値
・広告予算:89,045円
・コンバージョン:17件
・CPA:5,238円
推移のグラフ
「データ集約」×「自動入札」×「広告文作成」が上手く機能しました。
現在は自動入札でコンバージョン数も安定して獲得できているため、「インハウス運用」に切り替えて自社内で広告運用を行っております。
私は直接的に運用は行っていませんが「インハウス支援」という形で、ちょっとした質問への回答や広告文作成のアドバイスなどをサポート中です。
月額10万円の広告予算であれば、初期のアカウント設計を正しく作成し、
1、毎日の予算進捗確認(1日30分程度)
2、顧客ニーズに合わせた広告文の作成(週1回)
3、検索クエリのチェック(週1回)
を定期的に実施することで、インハウス運用で十分に成果が出せます。
マイクロコンバージョンの活用も有効
少額案件の場合、発生するコンバージョン数が少なくなり、自動入札が上手く機能しないケースもあります。
そのときは「マイクロコンバージョン(中間コンバージョン)」の活用が有効です。
詳しくは「マイクロコンバージョン(中間コンバージョン)とは?効果的な活用方法」をご覧ください。
まとめ
案件の特性によっては「自動入札」が必ずしも効果的だとは限りませんが、「自動入札」を活用することで『無駄な手間をかけずに成果を上げることができた』というケースのご紹介でした。