先日、Unyoo.jp様が主催した「リターゲティングに寄り添わない、未来の広告運用を考える」というセミナーに参加させていただきました。
私は元々、法律事務所士でリスティング広告のインハウス運用をしており、法律相談の広告はGoogle広告の「パーソナライズド広告」に該当し、GDNではリマーケティングを実施できませんでした。
※Google広告なので「リターゲティング」ではなく「リマーケティング」と記載しています。(統一して欲しい…)
そのため、今でも「ディスプレイ広告=リターゲティングに寄り添う」という、”リタゲ依存”の意識があまりないです。(もちろん、リターゲティング配信できる案件では活用していますが)
今回は『GDNリマーケティングに寄り添わないで、GDNの成果を改善した事例』について、数値と実際に設定した内容を合わせて紹介します。
目次
まずは改善した数値を紹介
BtoC商材のリード獲得案件です。
18年12月までは別の代理店様が運用しており、19年1月から運用を切り替えました。
18年11月から19年7月までの、GDNのグラフがこちら。
運用を切り替えて3ヵ月ほどで、数値も大きく改善しました。
まず、18年11月の切り替え前の数値です。
◆18年11月
・ディスプレイ広告の費用:587,498円
・ディスプレイ広告のコンバージョン数:55件
・ディスプレイ広告のCPA:10,682円
そして、成果が改善し始めた19年4月の数値です。
◆19年4月
・ディスプレイ広告の費用:2,479,059円
・ディスプレイ広告のコンバージョン数:269件
・ディスプレイ広告のCPA:9,216円
ディスプレイ広告のCPAを抑えながら、コンバージョン数は約5倍に増加しました。
ここまで成果を大きく改善した要因は
「【新】GDN:興味関心」キャンペーン ←リマーケティング配信以外のキャンペーン
の運用に注力したことです。(検索広告の運用にも注力してるけどね!)
・「【新】GDN:興味関心」キャンペーンの費用:2,253,210円
・「【新】GDN:興味関心」キャンペーンのコンバージョン数:251件
・「【新】GDN:興味関心」キャンペーンのCPA:8,977円
「【新】GDN:リマーケティング」キャンペーンの約10倍の配信量で、CPAも「興味関心」の方が抑えられていて、”リマーケティングに寄り添わない運用”です。
では、運用を切り替えた19年1月~3月の間、具体的に何を行ったか記載します。
ディスプレイ広告の配信で考えるべきポイント
ディスプレイ広告に限らず、全ての広告に言えることですが、広告を掲載するときに考えるポイントは
①誰にどのサイトで広告を表示するか?
②どんな内容の広告を表示するか?
③どのタイミングでいくら(何円)で広告を表示するか?
です。
『そんなの当たり前でしょ、分かってるよ』
と言われそうですが、この当たり前のことを地道に試行錯誤しながら改善していっただけです。
リスティング広告は”魔法”ではないので、一瞬で成果が変わることはほとんどありません。(よっぽど前任者の運用が酷い場合は別)
どちらかというと”手品”に近いイメージで、裏側でコツコツと準備をすれば、何も知らない人には”魔法”のように思わせることができるのかな、と。
ということで、ここからは”手品の種明かし”をします!
基本的な設定をひたすら試しただけですが…
①誰にどのサイトで広告を表示するか
「誰に=オーディエンス」と「どのサイトで=トピック、プレースメント」を考えていきます。
例えば『転職サイトの登録者獲得』の案件であれば、「転職を考えている人が、転職に関するサイトを訪問したときに広告を表示する」が、登録に繋がりやすい状況です。
このように、「誰に」「どのサイトで」広告を表示するかを、掛け合わせて考えていきます。
人(オーディエンス)の設定
GDNには様々なオーディエンスターゲティングがあります。
私は
・類似ユーザー
・アフィニティカテゴリ
・インテント(購買意向の強いオーディエンス)
の3つを1度は試します。
「このオーディエンスの成果が良い」というパターンが、案件によっても違ったり、また同じ案件でも時期によって変わったりするため、数値や後ほど説明する自動入札の状況によって変えています。
類似ユーザー
類似ユーザーにも何パターンかあり、私の場合はまず
・「サイト訪問者すべて」の類似ユーザー
・「コンバージョンしたユーザー」の類似ユーザー
・「AdWords optimized list」の類似ユーザー
・「スマートリスト」の類似ユーザー
を試します。
ケースバイケースですが、色々と試した印象としては、
・「コンバージョンしたユーザー」の類似ユーザー
の成果が良いケースが多いです。
アフィニティカテゴリとインテント(購買意向の強いオーディエンス)
アフィニティカテゴリとインテント(購買意向の強いオーディエンス)は、カスタム設定など、試行錯誤できる幅が広いので『色々と試して良い感じの設定を見つける』という、地道な作業を繰り返します。
アフィニティカテゴリとインテント(購買意向の強いオーディエンス)の成果比較については、『【GDN】「カスタムアフィニティ」と「カスタムインテント」の成果を比較してみた』をご参考ください。
配信先の設定
GDNの配信先をコントロールする方法として、私がよく試すのは
・トピックターゲティング
・コンテンツキーワードターゲティング
・トピックターゲティング×コンテンツキーワードターゲティング
の3パターンです。
下に行くほど、配信先が絞られます。
どれを設定するかは、「広告予算(配信量)」と「自動入札の動き」によって変わりますが、配信量を調整しやすい
・コンテンツキーワードターゲティング
を使うことが多いです。
プレースメントターゲティングについて
配信先プレースメントの結果を見て、「除外」に使うことが多いです。
特に「クリック率が異常に高いプレースメント」は、プレースメントのサイト内容を見てから、除外すべきかどうか判断します。
アプリ配信の除外について
GDN配信では「アプリ配信を除外する」という方法が定石になっていることも多いですが、コンテンツキーワードターゲティングを上手く設定できていると、サービスにマッチしたアプリのみに配信されるケースがあります。(2019年12月現在)
『最初からアプリは除外する』よりも、『配信先を絞ったうえでアプリ面にも配信してみる』を試してみた方が良いです。
②どんな内容の広告を表示するか
広告は「クリエイティブ」と「リンク先」の2つを考えます。
クリエイティブの設定
300×250といった固定サイズの「イメージ広告」と、画像とテキストを組み合わせて生成される「レスポンシブディスプレイ広告」の両パターンを設定します。
2019年12月現在では、『「レスポンシブディスプレイ広告」よりも「イメージ広告」の方が成果が良い』というケースも多いです。
可能な限り、「レスポンシブディスプレイ広告」と「イメージ広告」の両方を設定することをオススメします。
リンク先(ランディングページ)の設定
リンク先(ランディングページ)は、コンバージョン率に大きく影響するため重要です。
自分自身でランディングページを作ったり改修することはできなくても、『ランディングページのここを改善した方が良い』という提案はできます。
Googleアナリティクスやヒートマップを見ることができなくても、競合他社や類似サービスのLPをいくつかピックアップして、良い点、悪い点を比較するなど、やり方は色々あります。
また、Googleアナリティクスの閲覧権限がある方なら、数字と合わせてランディングページの改善提案を行うと、制作担当者も動いてくれます。
「Googleオプティマイズ」を使える方は、『ファーストビューの写真を変える』など、自分で実施しやすい箇所からABテストを試してしいきましょう。
③どのタイミングで、いくら(何円)で広告を表示するか
入札に関する部分です。
運用者によって考え方は様々ですが、私は『GDNこそ媒体の自動入札を活用すべき』派です。
媒体の自動入札は、管理画面では確認できない情報(シグナル)を元に、広告を表示するタイミングや入札単価を、広告が表示される度に調整します。
検索広告よりもGDNの方が広告表示回数も多いので、自動入札の恩恵を受けやすいと考えています。
個人的にGDNでおすすめの自動入札は「コンバージョン数の最大化」です。(たまに「クリック数の最大化」も使ってみたりします。)
とはいえ「広告の予算、表示回数」や「コンバージョン数」(=自動入札の学習に必要なデータ量)が揃わないと、自動入札も上手く動かないこともありますので、
『自動入札に任せれば間違いなし!』
の考えは危険です。
実際、GDNで「コンバージョン数の最大化」を使ったら、Google検索広告よりもCPCが高くなってしまい、コンバージョンも全く発生しないというケースもありました。。。
マイクロコンバージョン(中間コンバージョン)の活用と注意点
自動入札を活用するテクニックとして「マイクロコンバージョン(中間コンバージョン)を計測する」という手法があります。
>>>【リスティング広告】マイクロコンバージョン(中間コンバージョン)とは?効果的な活用方法
本来のコンバージョン(問合せ完了など)とは別に、「フォーム到達」や「ページスクロール」など、コンバージョンに関連する指標を別のコンバージョンデータとして追加し、自動入札の学習に活用する手法です。
ただGDNの場合、検索広告では上手くいっているマイクロコンバージョンの設定でも、本来のコンバージョンとマイクロコンバージョンの相関性に差が出たり、デバイスごとに傾向が大きく変わるケースが多いです。
特にフォーム一体型LPの際に設定しがちな「ページスクロール」や「ボタンクリック」などは注意が必要です。
Google広告は、キャンペーン毎に自動入札対象のコンバージョンを変更することが可能です。
GDNで自動入札を活用するときは、自動入札の動きに合わせて「GDN用コンバージョン」を何パターンか用意すると良いです。
Google広告でマイクロコンバージョンを使うときは「カスタム列」が便利
マイクロコンバージョンを設定すると、「コンバージョン」の指標に各コンバージョン数の合計値が表示されてしまい、本来のコンバージョンを確認したいときは
「分割⇒コンバージョンアクション」
を実施して、コンバージョンの種類ごとに分割してチェックする必要が出てきます。
しかし、Google広告には「カスタム列」という、任意の指標を作成できる機能がありますので、この機能を活用することをオススメします。
私の管理画面キャプチャーの指標が「資料請求CV」となっているのも、「カスタム列」を活用してオリジナルの指標を作成しているためです。
>>>【Google広告】「カスタム列」で表示する指標をカスタマイズ。見たい数字を簡単に確認する方法
(Yahoo!広告にも実装して欲しい…)
①②③が上手くかみ合うと成果も上がる
①ターゲットユーザー×配信面
②成果の出るクリエイティブ
③自動入札
これが上手く噛み合うと、成果も伸びていきます。
学生の頃は工学部で設計や回路図の勉強をしていたので、リスティング広告の運用はこんなイメージです。
・1日の予算
・対象ユーザー(オーディエンス×配信面)
・コンバージョンデータ
が丁度いいバランスになると、「コンバージョン数の最大化」が上手く動いてくれます。
具体的には「オーディエンス」と「コンテンツキーワード」のオン/オフで、「コンバージョン数の最大化」に適した対象ユーザー(配信量)とコンバージョン数を調整します。
「シムシティ(スーファミ版)」で例えるなら、
『住宅、商業、工業のバランスが上手く取れていると、自然と人口も増えて税収も増える』
みたいな。
ちなみに、工場は公害の元になるのでマップの端に作った方が良いです。
案件の特性や広告予算によってアカウント設計も変える
リスティング広告運用の面白い部分でもあるのですが、案件の性質や予算規模によって「運用方法に再現性がある、無い」が出てきます。
「シムシティ(スーファミ版)」で例えるなら、
『町を目指しているときは「火力発電の公害」に悩まされるけど、メガロポリスを目指すときは「交通渋滞」に悩まされる』
みたいな。
ちなみに、交通渋滞は「道路」を全て「電車」に変えるで解消できます。
「スマートディスプレイキャンペーン(SDC)」は試さないの?
こんな細かな設定や調整をしなくても「スマートディスプレイキャンペーン(SDC)」で配信すれば、AIが勝手に調整してくれるのでは?
これが理由ではないのですが、19年10月から「スマートディスプレイキャンペーン(SDC)」に切り替えてみました。
3ヶ月かけて調整してきたGDNキャンペーンのCPA。
SDCは開始たった2日目で、今までのGDNより低CPAで配信しています…。
この敗北感たるや…。
きっと、GDNで良い配信をしてたから、SDCも良い学習をしているんだよ。きっと…。 https://t.co/R4x9KpFbNR
— 田島佑哉(アミジャット)@中小企業診断士の勉強中 (@amijat_work) October 17, 2019
と、切り替え直後の成果は良かったのですが…。
「スマートディスプレイキャンペーン(SDC)」の話は、もう少し様子を見てから。
まとめ
検索広告に比べてGDN(非リマーケティング)は「オーディエンス」や「自動入札」など、考えて設定はしているものの『試してみないと分からない』というケースが多いです。
そのため、お客様の大切な予算を使って色々と試す必要があります。
また、コンバージョンの質(この言い方は嫌いですが…)も、検索広告より落ちる傾向です。
お客様とコミュニケーションを取りながら、うまく配信を調整していくことも、運用者のスキルの1つではないかと感じます。
「シムシティ(スーファミ版)」で例えるなら、
『市民に要求される前に「公園」を作って地価を上げる』
みたいな。
ちなみに、最近の都市シミュレーションゲームは「シティーズ:スカイライン(PS4)」が面白いです。
以上、『GDNリマーケティングに寄り添ってもいいけど、寄り添わなくてもやり方次第で成果は出せるよ。再現性は保証しないけど…』という事例紹介でした。