ウェブ広告運用の失敗事例集その1

こんにちは。アミジャットの田島です。

ウェブ広告の運用には、「仕様の勘違い」や「設定ミス」によるトラブル、いわゆる“配信事故”が起きることもあります。

以前、Twitterで「#100日以内に死ぬ広告運用者」という、ウェブ広告運用者にありがちなミスや勘違いをネタにしたツイートを100本投稿していました。

ツイート内容は「あるあるネタ」なのですが、一部の人から

『どこが間違いなのか、なぜ死亡するのか分からない』

という声もありましたので、投稿したネタについて解説してみます。

今回は「1日目から5日目」までのネタ5本の解説です。

広告媒体側も仕様が日々変わっており、当時の間違いネタが、今では通じないというケースもありますが、生暖かい目で読んでいただければ幸いです。

「#100日以内に死ぬ広告運用者」は、48日目までは「DAN爵さん(@NYUSQUARE)」というフリーランスが考えたネタ、49日目以降は私「アミジャット田島佑哉」が考えたネタです。

 

ウェブ広告(リスティング広告)運用の基本的な仕組みや考え方について知りたい方は、別ブログ「リスティング広告とは?リスティング広告の仕組みをわかりやすく解説」をご覧ください。

 



1日目:広告キャンペーンの「1日の平均予算」の設定金額が高すぎる

指摘ポイントは

『広告キャンペーンに設定する「1日の平均予算」の金額を高くしすぎている』

です。

Google 広告やYahoo!広告などを配信する際に、「キャンペーン」という階層に「1日の平均予算」という、1日に配信する広告費の目安金額を設定します。

※以降、キャンペーンに設定する1日の平均予算のことを、「キャンペーンの日予算」と記載します。

まず、このツイートの案件は1カ月(30日)の広告費が50万円ですので、1日あたり配信する広告費の金額は

「50万円÷30日=16,666円」

となります。

ただ、「キャンペーンの日予算」は、“必ずこの金額が配信される”という設定ではありません。

入札の設定額や、その日の検索数によって、「キャンペーンの日予算」に設定した金額よりも多く広告費が使われることもあります。

このツイートのように、「キャンペーンの日予算」を“999,999円”に設定すると、例えば

『テレビでお客様の業界のニュースが取り上げられて、検索数が急増した』

などが起きると、検索数の増加に合わせて検索広告のクリック数も増えますので、広告予算を1日でオーバーしてしまうリスクが発生します。

「キャンペーンの日予算」に設定する金額はいくらにするか?

これはウェブ広告運用者の経験やスキルによって違いも出てきますが、初心者であれば無難に「1日:1万6千円」と設定することが多いかと思います。

なぜ「キャンペーンの日予算」を“999,999円”に設定したのか?

『「キャンペーンの日予算」の設定金額が高すぎですね。これはダメですね。』

で終わらせたいところですが、もう少し深掘りしていきます。

そもそも、なぜ「キャンペーンの日予算」を“999,999円”にしたのか?

『まぁ「キャンペーンの日予算」を高く設定したい気持ちは分かるんだけど…』

と思った人はどれぐらいいますかね?

ここでポイントとなるのが、ツイートの中に記載されている「インプレッション損失無しにしたいから」の言葉です。

※Twitterの文字数制限の関係で省略されていますが、「インプレッション損失」は「インプレッション シェア損失率(予算)」のことを指しています。

「インプレッション シェア損失率(予算)」についてざっくり説明すると、「キャンペーンの日予算」を「1日:1万6千円」と設定していた場合、朝から広告がたくさんクリックされて午前11時の時点で広告費を1万6千円まで使ってしまっていると、媒体のシステムが

『もう広告予算を使いすぎだから、今日は広告表示を抑えよう』

と判断し、「夕方に対象キーワードで検索しても広告が表示されにくくなる」という状態になります。

この「キャンペーンの日予算」の影響で広告が表示されていなかった割合を、「インプレッション シェア損失率(予算)」という指標で確認できます。

「検索されていたのに広告が表示されていない」という状況は機会損失です。

このウェブ広告運用者は、「インプレッション シェア損失率(予算)」をできるだけ0%にしたいと考えた結果、

『1日の予算設定を「999,999円」にする』

という施策を行いました。

「インプレッション シェア損失率(予算)」を減らすために「キャンペーンの日予算」の設定金額を高く設定する。

この考え自体は決して悪い施策ではありませんが、設定金額が極端に高すぎましたね。

お客様の広告費を大切に使うことを頭に入れ、

“「キャンペーンの日予算」の設定額はいくらにするのが適切か?“

を考えながら運用する必要があります。

「ウェブ広告の成果は上げる」「広告予算の上限は守る」

「両方」やらなくっちゃあならないってのが「ウェブ広告運用者」のつらいところだな

覚悟はいいか?オレはできてる

Byタジーマ・ブチャラティ

「インプレッションシェア損失率(予算)」について、アミジャット田島の独り言

手動入札が主流のころからウェブ広告運用を行っている人は、検索広告の場合

『「インプレッションシェア損失率(予算)」は0%が当たり前でしょ』

『「キャンペーンの日予算」で配信金額の調整が許されるのは小学生までだよね』

という感覚ですよね。

私も、

『「インプレッションシェア損失率(予算)」は0%が正義』

だと思っていた時期もありました。※過去形にしている理由はこの後に記載します。

そもそも「インプレッションシェア損失率(予算)」が発生するということは、「1日の広告予算に対してオークションの機会が多すぎる」ということなので、原因としては

1:広告表示対象となる検索語句が広すぎる

2:入札額の設定が高すぎる

が考えられます。

1:は「登録キーワードを見直す」「除外キーワードを追加する」を行って、広告の表示対象となる検索語句を減らす。

2:に対しては、手動入札ならキーワードごとの入札単価を見直す。自動入札「目標コンバージョン単価制」を使っているのなら、目標CPAの設定を見直す。

などが、「キャンペーンの日予算を高く設定するする」以外に、「インプレッションシェア損失率(予算)」を減らす施策として考えられます。

ただ、自動入札で「コンバージョン数の最大化」(または「コンバージョン値を最大化」)を使っている場合、必ずしも

『「インプレッションシェア損失率(予算)」は0%が正義』

ではないんですよね。

自動入札の「コンバージョン数の最大化」(または「コンバージョン値を最大化」)は、「キャンペーンの日予算」の設定金額に合わせて配信量を調整する動きをします。

「コンバージョン数の最大化」では、1 日の平均予算を完全に使い切ることを目指します。”

引用元:「コンバージョン数の最大化」による入札について - Google 広告 ヘルプ

自動入札「コンバージョン数の最大化」で、「インプレッションシェア損失率(予算)」が0%の場合、「キャンペーンの日予算」に設定した額よりも配信金額が少ない可能性があります。

自動入札「コンバージョン数の最大化」は、“予算を完全に使い切る”を目指す動きをするので、CPAを抑えることよりも広告費を使うことを優先し、クリック単価が上がりすぎてしまう可能性があります。

ですので

『どの入札タイプを使っているか?』

によって、

『インプレッションシェア損失(予算)をどこまで許容するか?』

も変わります。

「インプレッションシェア損失率(予算)」や「どのケースの場合、どの自動入札タイプを使うか?」の話は長くなりますので、別の機会にブログでこの“持論”を書ければと思います。

あくまでも『私はこんな感じで考えています』の“持論”です。

残念ながら“正解”ではありませんので期待はしないでくださいね。

2日目:Googleの「パーソナライズド広告」のポリシーに違反する広告メニューを提案

このネタは、パッと見た感じ、

『リマーケティング広告を提案して何がダメなの?』

と感じますが、指摘ポイントは

『Google広告の場合、「離婚問題」の案件はリマーケティング広告を配信できない』

です。

※この当時は「リマーケティング」って名称でしたが、21年現在は「広告主様のデータ」という名称に変わりました。

時代ですねぇ。

※このブログ内では「リマーケティング」という名称を使わせていただきます。

これは、媒体によって基準が異なる部分もありますが、Google 広告の場合、「離婚問題」といった“個人のデリケートな問題”に関わるサービスでは、リマーケティングなどの「パーソナライズド広告」を実施できません。

ひと昔前は

『とりあえず「検索広告」と「リマーケティング広告」を提案する』

といった風潮もありましたが、お客様に実施メニューを提案する前に、媒体のヘルプ・ガイドラインを確認しましょう。

「法律事務所のウェブ広告」についてアミジャット田島の独り言

私はフリーランスになる前に、法律事務所に2年ほど在籍して、ウェブ広告をインハウス運用していました。

今でも法律事務所や税理士事務所などの士業のお客様から、ウェブ広告運用のご依頼をいただいておりますが、士業案件はリマーケティング広告以外にも独特のルールがありますね。

例えば「借金問題」であれば、Google広告の場合「債務関連サービスの認定」という申請手続きを行わないと広告を掲載できません(弁護士または司法書士の資格を証明できるものを提出する必要があります)

また、弁護士案件の場合、「弁護士会が定めた広告のルール」があり、広告の表現にも注意が必要です。

2日目のツイートで『離婚相談お考えの方へ 離婚専門の●●弁護士』と書いてありますが、弁護士会の「業務広告に関する指針」では

12 専門分野と得意分野の表示

(1) 専門分野は、弁護士等の情報として国民が強くその情報提供を望んでいる
事項である。

一般に専門分野といえるためには、特定の分野を中心的に取り扱い、経験が豊富でかつ処理能力が優れていることが必要と解されるが、現状では、何を基準として専門分野と認めるのかその判定は困難である。

専門性判断の客観性が何ら担保されないまま、その判断を個々の弁護士等に委ねるとすれば、経験及び能力を有しないまま専門家を自称するというような弊
害も生じるおそれがある。

客観性が担保されないまま専門家、専門分野等の表示を許すことは、誤導のおそれがあり、国民の利益を害し、ひいては弁護士等に対する国民の信頼を損なうおそれがあるものであり、表示を控えるのが望ましい。

引用元:業務広告に関する指針 - 日本弁護士連合会

と記載されていますので、「離婚専門の●●弁護士」の訴求は避けるべきですね。

このような「法律事務所のウェブ広告の注意点」は、また別の機会にブログに書きたいなと思います。

3日目:目的が不明確な「広告文のABテスト」

皆さんが大好きな「ABテスト」ですね。

指摘ポイントは

『違いが分かりにくい広告文でABテストを行っても、得られるメリットは少ない』

です。

広告文だけに限らず、ABテストって“一目で違いが分かるもの”で比較しないと、なかなか優位差が出ないですよね。

このツイートの場合、「ならAA」「はAA」「のAA」しか違いがありませんが、

『成果が良かった広告文は「はAA」です!』

と報告したとこで、

『だから何なの?』

と言われてしまいますよね。

そこから先の施策に繋がらない的な。

広告文なら「訴求の目的」を明確にしてABテストを行いましょう。

関連ブログ
広告文について詳しく知りたい方は、別ブログ「ユニコーンが見つかる!?効果的な広告文を作成するコツ」をご覧ください。

「広告文のABテスト」についてアミジャット田島の独り言

広告文は

・顕在層向け
・潜在層向け
・今直ぐに欲しい層向け

それぞれの層の訴求を考えて設定したら、ABテストの結果は「今直ぐに欲しい層向け」が良くなる可能性が高いです。

だって『今すぐ欲しい人がクリックしやすい広告文』なんだもん。(たじお)

ですので、この状態でABテストを単純に行うと、「今直ぐに欲しい層向け」の広告文しか残らないことになってしまうんですよね。

各ターゲットの中で

・顕在層向け ←この中でABテスト
・潜在層向け ←この中でABテスト
・今直ぐに欲しい層向け ←この中でABテスト

とABテストを実施するのがベストだと考えています。

また、検索広告の場合、今後は「レスポンシブ検索広告」と呼ばれる、“色々な訴求を詰め合わせて、媒体側のシステムが良い感じの組み合わせを表示する”というフォーマットが主流となります。

「レスポンシブ検索広告」の場合、今の時点では“どの訴求からどれだけコンバージョンが発生したか?”を確認できないため、

『AとBのどっちが良いか?』

の同じ期間での優位比較ではなく

『AとBの組み合わせを、AとCに変えたら、成果はどう変わるか?』

と、変更した前後での比較が主流になるのかなと思っています。

実際、私も「広告文をAとBとで単純比較する」というケースは少なくなりました。

そもそも広告文ごとに狙うターゲット層が違いますので。

4日目:検索広告の掲載順位の偽装工作?


指摘ポイントは

『お客様に内緒で、“本来のウェブ広告の成果(目的)”に繋がらない施策を実施している』

です。

このツイートのように、お客様から

『ウチの広告を1位に表示して欲しい』

と依頼されるケースもありますよね。

本来はお客様のご要望をくみ取りながら、ウェブ広告の仕組みを説明したうえで、限られた予算の中で

『では、このような設定で試してみましょうか?』

と提案することもウェブ広告運用者の仕事です。

今回のケースは、お客様と議論する手間をかけたくないために

『お客様の会社付近だけ掲載順位を上げる設定にしよう』

という場当たり的な施策を取ってしまったケースです。

問題点としては

・お客様と向き合っていない
⇒『こんな予算でできるわけないじゃん。』の理由を説明してあげるべき。

・広告アカウントの閲覧権限を渡していない代理店
⇒『ノウハウが流出するので広告アカウントは開示できない』を理由にして、お客様に内緒で変な施策を実施している。

あたりですね。

「お客様からの要望」についてアミジャット田島の独り言

私の場合はフリーランスとして活動しており、ウェブ広告の運用案件数も絞っています。

その分、1社ごとのお客様と長くお付き合いしていくことを考えて

『お客様とウェブ広告の運用方針をじっくり議論する』

を行っています。

今回の場合なら

・『検索広告の目的は「利益を出すこと」で、「1位表示」ではないですよ』の認識合わせ

・『ユーザーの環境によって広告の掲載順位も変わりますよ』の説明

・もしかしたら「1位表示」の施策が有効かもしれないので、ご予算の中で実施できる施策案の提示

を行いますね。

これがGoogle 検索広告と仮定して、具体的には

ステップ1:まず、予算が限られているのであれば、「対象の検索語句(キーワード)」と「配信地域」を見直す

ステップ2:Google 広告の「テストと下書き」の機能を使って、配信の50%を「1位表示狙い」の設定にする

ステップ3:「通常の運用」と「1位表示の運用」の配信結果を元に、今後どうゆう方針で運用していくかを話し合う

です。

私の今までの経験上ですが、どんなに媒体の仕様やロジックに基づいて

『その施策は成果に繋がらないと考えています』

と説明しても、お客様にはお客様の考えがあるので、なかなか納得してもらえないことも多いです。

その場合は「テスト機能などを活用して実際に試してみて、データを元に議論する」がスムーズに進みます。

5日目:ウェブ広告運用の放置プレイ。広告アカウントの進捗チェックは月末のみ…

指摘ポイントは

『広告アカウントの進捗状況をチェックしていない』

です。

まぁ、そのままですね。

ウェブ広告の進捗状況を25日間もチェックしないというのは、かなり終わっているウェブ広告運用者ですが、一般的な「ウェブ広告の進捗チェック」の頻度が気になって、アンケートを取ってみたらこんな感じでした。

もしかしたら「異常値が出たときだけ通知が届く」みたいなシステムを導入していて、運用者のチェック頻度を少なくする仕組みを導入しているのかもしれませんが、個人的にはウェブ広告運用者には「毎日チェック」を習慣として実施して欲しいですね。

想像力とは観察力である。世の中に新しい創造などない。あるのはただ発見である。

Byガウディ

関連ブログ
毎日の進捗チェックの大切さについては、別ブログ「リスティング広告運用のコツをフリーランスに聞いてみた」をご覧ください。

また、ツイートの内容を見ると「25日の時点で消化率50%」で「とりあえず日予算を10倍」と…。

仮に月額予算が30万円で30日間の配信だとすると、

・25日の時点で15万円を配信している ← 1日あたり6千円の配信

・残り5日で15万円を配信する ←1日あたり3万円の配信

となります。

しかしツイートの内容には「とりあえず日予算を10倍」とありますので、残り5日を6万円で配信することとなり、これでは28日の時点で月額予算をオーバーしますね…。

こうゆうウェブ広告運用者に対しては、「北の国から」の菅原文太さんのように

『あんたはさっきから運用って言っているが、こっちにとっては運用とは思えない。運用って何かね?』

と質問したくなりますね。

「ウェブ広告の進捗管理」についてアミジャット田島の独り言

皆さんは「ウェブ広告の進捗管理」って、どのようにすすめていますか?

私は新人のときに先輩から教わった、昔ながらの「エクセルで管理」です。

毎日数字を入力して、「残日数」とか「残予算」とか「獲得CV数」を関数で計算して、配信量を調整するというやり方です。

今はもっと便利な運用ツールとかがあるのですかね?

「エクセルを使って進捗管理」でやりがちなミスはだいたいこの2つで

1:関数を間違えている
⇒手入力しちゃダメなところを操作する

2:数値の変更を忘れている
⇒今月から予算が変わったのに更新していない

ですね。

需要があるかどうかは謎ですが、別の機会に「ウェブ広告の進捗管理方法(エクセル編)」の紹介ブログも書きます。

「#100日以内に死ぬ広告運用者」1日目~5日目のまとめ

本当は「1日目~10日目」で区切りたかったのですが、1ネタの解説を真面目に書いてみると、意外と文章が長くなってしまいまして、「5日間区切り」にしました。

ひとえに私の「文章を要約する能力の低さ」です!

ネタが残り95日分ありますので、「5日間区切り」ですと、解説ブログは残り19本になりますね。

「#100日以内に死ぬ広告運用者」の全てのネタ解説を公開できるようにコツコツと頑張ります。

最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。この記事が役に立ったなと思ったらSNSでシェアしていただけるとうれしいです。