弁護士・法律事務所がWeb広告を掲載するときに注意するポイント

日本弁護士連合会(日弁連)が設立された当時、弁護士・法律事務所の広告は、「弁護士の品位を損ねる」と考えられていて、広告の掲載は禁止されていました。

弁護士・法律事務所の広告が全面的に解禁されたのは2000年で、日弁連の規定を守ったうえで広告を掲載することが可能となりました。今では法律事務所のテレビCMなど、広告を目にする機会も増えました。

しかし、広告を掲載する弁護士・法律事務所が増えるにつれ、「弁護士の業務広告に関する規定」を守っていない広告をみかけることが多くなりました。

私はフリーランスになる前は、都内の法律事務所に「広報・マーケティング担当」として在籍し、その時に「弁護士の業務広告に関する規定」を勉強しました。また、フリーランスになった今でも、様々な弁護士・法律事務所のWeb広告運用をお請けしてきました。

このブログでは、弁護士・法律事務所のWeb広告運用に携わってきた経験をもとに、『弁護士・法律事務所がWeb広告を掲載するときに注意するポイント』を紹介いたします。



弁護士・法律事務所の広告掲載について

弁護士・法律事務所が広告(正式名「弁護士業務広告」)を掲載する場合、守るべきルールがあります。

まずは広告ですので

・不当景品類及び不当表示防止法(景表法)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/

を守る必要があります。

そして日本弁護士連合会が作成した規定

・弁護士等の業務広告に関する規程
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_44r.pdf

・業務広告に関する指針
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/pdf/kaiki/kaiki_no_45-2_160620.pdf

を守る必要があります。

「弁護士等の業務広告に関する規程」で禁止されている広告例

「弁護士等の業務広告に関する規程」
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_44r.pdf

では、以下の広告が禁止されています。

 

1:事実に合致していない広告

2:誤導又は誤認のおそれのある広告

3:誇大又は過度な期待を抱かせる広告

4:困惑させ、又は過度な不安をあおる広告

5:特定の弁護士、弁護士法人、外国法事務弁護士、外国法事務弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人又はこれらの事務所と比較した広告

6:法令又は本会若しくは所属弁護士会の会則若しくは会規に違反する広告

7:弁護士等の品位又は信用を損なうおそれのある広告

 

です。

「絶対に勝てます!」や「今すぐ相談しないと人生が終わりますよ!」のような煽り訴求、弁護士の品位を下げるような“ゲスな広告”は禁止されています。

どこまでが弁護士・法律事務所のWeb広告に該当するのか

「弁護士業務広告」については、「弁護士等の業務広告に関する規程」の第二条にて

 

弁護士が、口頭、書面、電磁的方法その他の方法により自己又は自己の業務を他人に知らせるために行う情報伝達行為であって、顧客又は依頼者となるように誘引することを主たる目的にするものをいう。

 

と定めています。

Web広告に該当するものを考える際、分かりやすいものは

・GoogleやYahoo!などの検索エンジンに表示する「リスティング広告(検索連動型広告)」
・様々なウェブサイトの配信する「バナー広告」
・YouTubeに配信する「動画広告」
・FacebookやX(旧Twitter)などのSNSに配信する「SNS広告」

など、広告費用が発生するものです。

『これも「弁護士業務広告」のWeb広告に該当するの?』と判断が難しいもの

弁護士等の業務広告に関する規程」の第二条の

 

弁護士が、口頭、書面、電磁的方法その他の方法により自己又は自己の業務を他人に知らせるために行う情報伝達行為であって、顧客又は依頼者となるように誘引することを主たる目的にするものをいう。

 

は解釈の幅が広いので『これは「弁護士業務広告」に該当するの?』と迷うケースがあります。

Web施策では、以下のものが「迷うケース」に該当します。

弁護士・法律事務所のホームページ

まずは「弁護士・法律事務所のホームページ」についてです。

弁護士・法律事務所のホームページでは、取り扱う法律分野、料金体系の説明、お問い合わせ先の電話番号や入力フォームが用意されていることがほとんどです。

これは” 顧客又は依頼者となるように誘引することを主たる目的にするもの”とみなされ、「弁護士業務広告」と判断される可能性が高いです。

つまり、リスティング広告(検索連動型広告)やバナー広告を配信していなくても、所有しているホームページ自体が「弁護士業務広告」に該当すると考えた方が良いです。

弁護士・法律事務所のSNS

次にFacebookやX(旧Twitter)などのSNSへの投稿についてです。

SNSへの投稿内容が

“離婚問題にお困りの方はご相談ください”

であれば、「弁護士業務広告」に該当すると指摘されても、『まぁそうですよね』と思う人も多いかと。

ただ、弁護士の先生がSNSに話題のニュース記事をコメント付きで投稿したり、“今日のランチです”と料理の写真を投稿することもありますよね。

ランチの写真まで「弁護士業務広告に該当する」と指摘されたら、『いや、さすがに違うでしょ』となりますよね…

SNSについては、「投稿を単体ごとに判断するか?」「投稿の集合体であるアカウントで判断するか?」で見解が分かれ、私も断言することができません。

しかし、私が弁護士の方から相談されたときは『SNSアカウントは「弁護士業務広告」に該当する可能性がります』と伝えています。

大抵の弁護士の方は、SNSアカウントのプロフィル欄に「法律相談をお受けしています」と記載しており、またホームページへのリンクを設定しているので、『絶対に「弁護士業務広告」には該当しません』と言い切れませんので。

弁護士・法律事務所のYouTube動画

最後にYouTubeへの動画投稿についてです。

最近では「弁護士YouTuber」としてチャンネル登録者数が多い弁護士も登場しています。

また、チャンネル登録者数にかかわらず、法律問題の解説動画を公開している弁護士事務所も多いのではないでしょうか。

YouTubeへ投稿した動画、またYouTubeチャンネル自体についても、FacebookやX(旧Twitter)と同様に、『「弁護士業務広告」に該当する可能性がある』と考えておいた方が良いです。

「弁護士業務広告」のWeb広告でみかける違反事例

弁護士・法律事務所のWeb広告でよく見かける違反事例をまとめます。

所属弁護士会の記載がない

弁護士・法律事務所の広告には、代表弁護士の氏名と所属弁護士会を表示する必要があります。この「所属弁護士会の記載」が抜けているケースをみかけます。

リスティング広告(検索広告)やバナー広告であれば、「広告をクリックしたときに表示されるウェブページ」に所属弁護士会を記載してください。

また、SNSアカウントのプロフィールページ、YouTubeチャンネルの概要欄にも、所属弁護士会を記載することを推奨いたします。

「離婚専門」といった「専門」の表現について

業務広告に関する指針の「第3規程第3条の規定により規制される広告」にて、専門という表現は控えるのが望ましいと記載されています。

客観的に何を基準として「専門」なのか判断することが難しく、自己申告制にしてしまうとその分野の経験がない弁護士でも「私は離婚専門の弁護士です」と名乗ることができてしまい、結果的に弁護士の信頼を損ねるので控えましょう、といった内容です。

解決事例の信ぴょう性&依頼者様のプライバシー厳守

弁護士・法律事務所のWeb広告でも、リンク先ページ(広告LP)の中に「解決事例」を記載することがあります。

まず「虚偽の広告はNG」ですので、実際に解決した事例を掲載する必要がります。もし、架空の事例を記載する場合は、目立つように「この事例は架空のものです」と記述する必要があります。

また、掲載する事例は「上手く解決したケース」を選ぶことが多いかと思います。
例えば『慰謝料として〇〇〇万円を獲得』など最も高い金額での解決事例を記載した場合、「誇大又は過度な期待を抱かせる広告」に該当する可能性があります。注釈にて「実際の金額はご依頼者様のご状況によって異なります」などの記載を入れましょう。

そして、実例を掲載する場合、弁護士・法律事務所とご依頼者様には「守秘義務」がありますので

・ご依頼者様から「事例掲載」の許諾をいただく
・名前をイニシャルや仮名にし、ご依頼者が特定されるような詳細なことは書かないようにする。
・注釈で「プライバシー保護のため、事例の一部を抽象化しています」と記載する。

を行いましょう。

広告の写しの3年間の保管義務

弁護士の業務広告に関する規定では「広告を掲載したときから過去3年間の広告の保存義務」が明記されています。

「インターネットのホームページを利用した広告の保存又は記録」については、「データ又はプリントアウトした印刷物を保存するものとする」と指定されています。

広告用のLP、バナー広告や検索広告のクリエイティブの保存を忘れないようにしましょう。

リスティング広告(検索広告)の保存方法

リスティング広告(検索広告)に詳しい人であれば

『レスポンシブ検索広告って、表示内容がバラバラに組み合わさるけど、どうやって保管するの?』

と思うのではないでしょうか。

私(アミジャット)では、配信中のレスポンシブ検索広告の

・管理画面に表示される「アセット一覧」のキャプチャー

を保存するとう形式で対応しています。

弁護士広告_アセット

Web広告媒体(Google広告)における弁護士・法律事務所の広告出稿の注意点

・不当景品類及び不当表示防止法(景表法)
・弁護士等の業務広告に関する規程

を守ったうえで、Web広告媒体が定めた「弁護士・法律事務所の広告」の関するポリシーにも準ずる必要があります。

今回はGoogle 広告にてポリシー違反になりやすい項目をピックアップします。

「パーソナライズド広告」のポリシー違反に該当する可能性

「パーソナライズド広告」とは、ユーザーの行動や関心対象についてのデータを利用するターゲティング広告です。(リマーケティングやカスタマーマッチなど)

弁護士・法律事務所の広告は、「デリケートな商材(個人的な苦難)」に該当するとみなされ、「パーソナライズド広告」を実施できない可能性が高いです。

厳しい経済状況(パーソナライズド広告の場合)
個人の債務、経済的な困難や困窮

例: 破産手続代行業、福祉サービス、ホームレス向けシェルター、失業者向けの情報、略奪的貸付商品およびサービス

人間関係における困難(パーソナライズド広告の場合)
家族や友人との関係、その他の対人関係における個人的な窮状

例: 離婚関連サービス、離婚問題への対応に関する書籍、死別への対応に関する商品やサービス、家族カウンセリング サービス

犯罪(パーソナライズド広告の場合)
個人の犯罪歴、前科、犯罪の嫌疑、起訴歴

例: 保釈サービス、刑事事件弁護士

虐待や心的外傷(パーソナライズド広告の場合)
虐待、犯罪、その他のトラウマ的な出来事の被害経験

例: 家庭内暴力保護施設、被害者擁護サービス

引用:パーソナライズド広告 - Google 広告ポリシー ヘルプ

今までの経験上、弁護士・法律事務所の案件はどの分野の法律相談でも、全て「デリケートな商材(個人的な苦難)」に該当しました。

Google広告の管理画面には「カスタマーマッチを利用しましょう」と提案メッセージが出て来るのですが、
『いやいや、そちらが決めたポリシーで利用できないんですけど…』
と思うこともたまにありますね。

借金に関する相談は「債務関連サービスの認定」の手続きが必要

『あなたの借金を減らせる可能性があります』

のような借金に関する広告(債務整理、自己破産など)は、Googleに対して「債務関連サービスの認定」を申請する必要があります。

債務関連サービス(債務整理や債務管理の計画)を宣伝する広告主様は、一部の国で Google 広告を使用して広告を掲載することが許可されていますが、Google の認定を受けていただく必要があります。

引用:債務関連サービスの認定について - Google 広告ポリシー ヘルプ

「Google 広告の債務関連サービスの認定申請」の専用フォーム

から、日本弁護士連合会の登録番号や弁護士資格を証明する写真をアップロードする必要があります。

Web広告の運用を任せるなら「弁護士に特化した広告代理店(コンサル)」と「通常のWeb広告代理店」のどちらがいいか?

完全に私の主観(経験)ですが、「通常のWeb広告代理店」に依頼した方が良いです。

このブログで記述した注意事項は、弁護士・法律事務所様側で把握したうえで、リスティング広告(検索公告)などは「通常のWeb広告代理店」に依頼して、弁護士の業務広告に違反する箇所がないかチェックするやり方をオススメします。

「弁護士に特化した広告代理店(コンサル)」をオススメしない理由は

 

・「通常のWeb広告代理店」と比べて、広告運用のノウハウが弱い
・競合する同じ分野の案件を請けた場合、「利益相反」になりますよね?
・Web広告の知識に疎い弁護士を狙って騙している業者が多い ←ほんとに多い!

 

です。

ちなみに、ウチ(アミジャット)にご相談いただく弁護士・法律事務所様は、

『「弁護士に特化した広告代理店(コンサル)」に依頼しているけど上手くいっていない』

というケースばかりです。

関連ブログ
リスティング広告(Web広告)代理店の選び方について知りたい方は、別ブログ「リスティング広告代理店の選び方|オススメ代理店も紹介」をご覧ください。

まとめ

私自身が弁護士・法律事務所のWeb広告を行っているため、頻繁に「弁護士・法律事務所のWeb広告」に遭遇します。

広告主の法律事務所が把握しているかは分かりませんが、「弁護士の業務広告に関する規定」に違反する広告は多いです。

弁護士・法律事務所が広告を掲載する場合は、「弁護士の品位を落とさない」ことに注意を払っていただきたいです。

そのためにも、弁護士・法律事務所が「弁護士の業務広告に関する規定」を把握し、信頼できるWeb広告代理店を探してみてください。

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