品質スコアが低いキーワードは停止する

こんにちは。アミジャットの田島です。

以前にTwitterで「#100日以内に死ぬ広告運用者」という、ウェブ広告運用者が勘違いやミスをしがちなネタを投稿していました。そのネタについて「指摘ポイントはどこか?」を解説するシリーズの第5回目です。

1日目~48日目までの元ネタを考えていた「DAN爵さん(@NYUSQUARE)」からは、

『私のネタは内容が荒いものもあるので、「解説シリーズ」で掘り返さないでください』

とお願いされましたが、これはダチョウ倶楽部の

『絶対に押すなよ!』

的なノリのやつだと思われますので、どんどんとネタを掘り返していきます。

今回はちょうどDAN爵さんのネタが荒くなりだした、21日目から25日目までのネタをおピックアップします。

※「#100日以内に死ぬ広告運用者」の元ネタは、1日目~48日目までは「DAN爵さん」、49日目以降は私「アミジャット田島佑哉」が考えています。

 

Web広告(リスティング広告)運用の基本的な仕組みや考え方について知りたい方は、別ブログ「リスティング広告とは?リスティング広告の仕組みをわかりやすく解説」をご覧ください。
リスティング広告とは

 



【21日目のネタ】ウェブ広告の用語は「正しい言葉」と「伝わる言葉」の使い方に気を付ける

まず先に、ネタ投稿者のDAN爵さんが本来想定していた“指摘ポイント”は

『リンク先URLがサイトリニューアルなどで、知らないうちに変わってしまっている』

とのことでした。

・知らないうちにリンク先URLが別ページにリダイレクトしている

・いつのまにか404ページになっているけど審査落ちせず配信されている

 

などを経験したことがある人もいるかと思います。(私も昔ありました)

ただこれに関して私は、全てがウェブ広告運用者のミスだとも言い切れないので、「間違いポイント」というよりは「あるあるネタ」かなぁと思いました。

まぁ、あえて「指摘ポイント」風に書くとしたら

『お客様からサイトリニューアルなどの情報をちゃんと共有してもらえるように、普段からのコミュニケーションや関係性を築きいておきましょう』

ですかね。

そして私がこのネタで取り上げたい、もう1つの「指摘ポイント」は

『ウェブ広告用語は「正しい言葉」と「伝わる言葉」の使い方に気を付けましょう』

です。

私が最初にこのネタを見たときに、

“細かく配信先URLを設定している案件”

という文章から、

『GDNのプレースメントターゲティングを設定している案件かな?』

と思いました。

GDNの「プレースメントターゲティング」とは、ディスプレイ広告を表示したいサイトのURLを指定するターゲティング手法です。

例えば「クックパッド」だけにディスプレイ広告を表示させたいのなら「cookpad.com」を配信先に指定します。

※なお、YDAに同じターゲティングがあるのですが、名称は「プレイスメントターゲティング」となり、GDNとは“プレース”と“プレイス”の違いがあります。

ネタの文章の続きを読むと、

“それぞれ広告文ごとにLPを変えたんだよねー”

と書かれていたので、私は

『「ディスプレイ広告」ではなく「広告文」を設定しているってことは、YDAの「テキスト形式」のことか、GDNで裏技を使って「拡張テキスト広告」を設定しているのかな?』

と、ネタの本筋からどんどん離れたところが気になってしまいました…。

このネタの指摘ポイントがどこなのか分からなかったので、DAN爵さんに確認したところ

誤:細かく配信先URLを設定している案件

正:細かくリンク先URLを設定している案件

の書き間違いで、このネタは検索広告の話でした。

「配信先URL」と「リンク先URL」は似ている言葉ですが意味は全く別物なので、私のように混乱してしまう人も出てきます。

以前に読んだ「広告運用者が「正しい用語」に敏感にならなければいけない理由」というブログが印象に残っていたので、この指摘ポイントを取り上げさせていただきました。

私自身も誤字や脱字が多いタイプの人間ですので、言葉の使い方に注意していきます。

【22日目のネタ】「品質スコアが高い=CPCが低い」ではない

指摘ポイントは

『品質スコアが高い登録キーワードだけに絞っても、クリック単価が下がる訳ではない』

です。

「品質スコア」(Yahoo!広告では「品質インデックス」)の抑えておくポイントは以下の通りです。

・そもそも「品質スコア」の数字はクリック単価を決める要素ではない。(「広告の品質」とは別物)
⇒オークション時にクリック単価を決める要素「広告ランク」の算出に、「品質スコア」は使われていない。

・「品質スコア:10」の登録キーワードから発生した検索語句(クエリー)の全てが「10」ではない

検索語句の品質スコア

 

22日目のネタのように、「品質スコア」と「広告の品質」がゴチャゴチャになってしまい、

『「品質スコア」でオークション時のクリック単価が決定する』

という認識をしてしまい、「品質スコアを上げることを目的とした運用」を行ってしまうケースは多いです。

「品質スコア」との向き合い方について、Google 広告のヘルプから以下の文章を引用させていただきます。

品質スコアについての豆知識

・品質スコアは KPI(重要業績評価指標)ではないため、最適化したり、他のデータとともに集計したりするべきではありません。

・品質スコアは、広告オークションにおける評価材料にはなっていません。あくまで診断ツールとして、あるキーワードに対して表示される広告がユーザー エクスペリエンスに及ぼす影響を示したものです。

引用元:品質スコアについて - Google 広告 ヘルプ

私も「品質スコア」の数字をウェブ広告運用のKPIにするのではなく、あくまでも「ウェブ広告運用の改善の目安」として取り扱うことをオススメします。

ウェブ広告運用の改善のヒントとして、「品質スコア」を決める3つの要素

  • 推定クリック率
  • 広告との関連性
  • ランディングページの利便性

のデータと上手く向き合っていきましょう。

「品質スコア」の昔話

私がリスティング広告運用の仕事を始めたのが2013年でした。(あえて「リスティング広告運用」と書いています。)

当時は「品質スコア」が広告のクリック単価を決める指標として教わりました。

先輩から教わったリスティング広告の運用ノウハウも

「品質スコア」が6以下のキーワードは停止する。
⇒「アカウント内の品質スコア」の平均値が高いほど成果が向上する。

「品質スコア」が評価されるのは完全一致キーワードにクリックを集める
⇒完全一致キーワード、部分一致キーワードを広告グループで別けて登録し、完全一致キーワードグループの入札を高くすることで、完全一致キーワードのクリック率を上げ「品質スコア」を高めることができる。

 

といったことを教わりました。

当時のやり方や考え方を

『昔は間違ったノウハウで運用していたんだな』

と、笑い話で終わらせるのは簡単ですが、それでは何の学びも得られませんので

  • なぜ当時は「クリック単価は「品質スコア」で決まる」が当たり前の認識だったのか?
  • いつから「クリック単価に「品質スコア」は影響しない」の考え方が広まったのか?

を深掘りしていくと、見えてくるものが変わります。

私はこの解説を書くために、今まで購入してきた「リスティング広告運用の解説本」を全て読み替えしで、「品質スコア」や「クリック単価が決まる仕組み」についてどう説明されているか見直してみました。

傾向としては、「AdWords」(「Google 広告」の以前の名称)という言葉が使われている本では、「クリック単価は品質スコアで決まる」と書かれているケースがほとんどでした。

ただ、「ネット広告運用”打ち手”大全」では、以下のように記載されていました。

広告の品質を管理画面で直接確認することはできませんが、その指針となる「品質スコア」については、管理画面でキーワードごとに確認できます。

引用元:ネット広告運用”打ち手”大全」62ページ

また、「いちばんやさしいリスティング広告の教本」では、以下のように記載されていました。

広告のランクに関わる「広告の品質」自体の数値は広告主もしることができませんが、その一部を成す「品質スコア」は、Google広告の管理画面で、1~10段階の数値で確認できます。

引用元:「いちばんやさしいリスティング広告の教本」54ページ

「広告の品質(≒品質スコア)」という表記を使うなどして、どちらの本もオークションの仕組みを正確に分かりやすく説明しようとしている工夫が伝わります。

【23日目のネタ】クリック率の改善方法を間違えている?

指摘ポイントは

1:『クリック率を「配信設定の変更」によって、改善したように見せようとしている』

2:『この「配信設定の変更」でやっているとこが、逆にクリック率を下げる施策になっている』

の2つです。(2つ目は元ネタを考えたDAN爵さんの意図とは違うかもしれませんが…)

1つ目の指摘ポイント

『クリック率を「配信設定の変更」によって、改善したように見せようとしている』

ですが、クリック単価やコンバージョン率、CPAを無視しても良いのなら

・クリック率が高いデバイスに配信を寄せる。(この場合「スマートフォン」)

・クリック率が高い配信先にバナーを出す。(この場合「アプリへの配信」)

 

を行えば、クリック率は高くなります。

広告運用の施策変更を、事前にどこまでお客様に伝えるかは、ウェブ広告運用者によって判断も変わるかと思います。

私個人としては、広告上の数値が急激に変わる施策を行うときは、事前にお客様に

『クリック率を上げるために、このような施策を行います』

と伝えるのが、人として優しいかなと思います。

後からお客様から

『どうしてクリック率が急に変わっているんですか?』

と質問されることは想定できますので、先に施策を伝えておいた方が「後出しジャンケン」感が無くて良いです。

あとは、そもそも論で「配信設定でクリック率を変えようとしない」も指摘ポイントですかね。

クリック率が悪いのは、バナーのクリエイティブに問題がある可能性が大きいので、お客様にクリエイティブの改善案を伝えるのが、正しいコミュニケーションだと思います。

次に2つ目の指摘ポイント

『この「配信設定の変更」でやっているとこが、逆にクリック率を下げる施策になっている』

です。

これは元ネタの

“掲載場所の制限カット、フリークエンシー無制限! ターゲティングしなきゃクリック率なんか高くなるんじゃ”

の文章ですが、実際にこの設定を行うと、

「掲載場所の制限カット」
⇒色々な場所に広告を表示することになる

「フリークエンシー無制限」
⇒同じユーザーに何度も広告を表示することになる

 

になるので、商材との関連性が薄い広告表示回数が増えるため、クリック率は下がってしまうのではないかな、と思いました。

ただ、元々の配信設定がメチャクチャな設定をしていた場合は、上記の施策(ターゲティングをしない)を行って、スマート自動入札を活用すると、クリック率が上がる可能性は0ではないので、「絶対に間違いです!」とも指摘しにくいネタですね…。

【24日目のネタ】Googleアナリティクスのパラメータを思いつきで設定している

このネタは指摘ポイントが分かりやすくて良いですね。

指摘ポイントは

『Googleアナリティクスの計測パラメータは、正しく設定しましょう』

です。

このツイートのパラメータを設定していても、Googleアナリティクス側で数値を確認できますが、Googleアナリティクスの「utm_source」と「utm_medium」には役割がありますので、仕様に合わせた綺麗なパラメータを設定しましょう。

関連ブログ
Googleアナリティクスのパラメータ設定について詳しく知りたい方は、別ブログ「Googleアナリティクスの広告用パラメータ設定で迷いやすいこと」をご覧ください。

【25日目のネタ】「広告管理画面のコンバージョン数 = 実際のお問合せ数」ではない

指摘ポイントは

『「広告管理画面のコンバージョン数=実際のお問合せ数」ではない』

です。

まず、このネタツイートの状況を解説します。

Google 広告のコンバージョンには「リピート率」という指標が存在します。

コンバージョンのリピート率の画面

Google 広告ヘルプの説明を引用します。

カウント方法に関係なく、[コンバージョン アクション] の表で、コンバージョン アクションごとに [リピート率] 列を確認すれば、1 回以上コンバージョンにつながったユーザーの平均コンバージョン数を確認できます。

引用元:コンバージョンのカウント方法について - Google 広告 ヘルプ

コンバージョンのリピート率は、「1ユーザーが平均で何回コンバージョンしたか」を表す指標です。

元ネタの「コンバージョン数は10件発生しているけど、リピート率が5.00」ということは、

・計測されているコンバージョン数:10
・ユーザーあたりのコンバージョン数:5
⇒10÷5=コンバージョンしたユーザー数は「2人」

 

となります。

このような状況になってしまった原因は「コンバージョンタグの設置ミス」や「お問い合わせ完了画面で更新(F5)を何度も行われていた」などが考えられます。

よくある「広告上のコンバージョン数」と「実際のお問い合わせ数」が合わないケース

また、元ネタとは別のケースで、「レポート上のコンバージョン数と実際のお問い合わせ数が合わない」でありがちなのは、「異なる広告媒体で重複してコンバージョンを計測してしまう」です。

例えばユーザーが

・Google 検索広告をクリック ⇒ ホームページから離脱

・Yahoo!検索広告をクリック ⇒ ホームページから離脱

・YDAのバナー広告をクリック ⇒ ホームページでお問い合わせ(コンバージョン)を行う

 

という行動を行った場合、実際のお問い合わせの件数は1件ですが、Google検索広告、Yahoo!検索広告、YDAのそれぞれに1件のコンバージョンが計測されるため、「広告媒体の合算レポート」上では3件のコンバージョンが発生したことになります。

『実際にどの広告から何件のお問い合わせが発生したの?』

を確認する際に、Googleアナリティクスを利用します。

流入経路(参照元/メディア)ごとのコンバージョン数を確認したいのなら、

「集客」⇒「すべてのトラフィック」⇒「参照元/メディア」
参照元メディアのキャプチャー

 

1回のコンバージョンに、どのような経路をたどったかを確認するのなら、

「コンバージョン」⇒「マルチチャネル」⇒「コンバージョン経路」
コンバージョン経路

 

流入経路(参照元/メディア)ごとコンバージョンへの貢献度を確認したいのなら

「コンバージョン」⇒「マルチチャネル」⇒「モデル比較ツール」
コンバージョンのモデル比較ツール

 

を活用します。

このように、Googleアナリティクスで広告ごとの数値を確認するためには、広告毎に計測用パラメーターを正しく設定しておく必要があります。

24日目のネタ解説で指摘した

『Googleアナリティクスの計測パラメーターは、正しく設定しましょう』

は、ここに繋がってきます。

「#100日以内に死ぬ広告運用者」21日目~25日目のまとめ

このブログを書いている22年3月に、Googleアナリティクスについて

『今までの「ユニバーサルアナリティクス」は23年7月1をもってサポートを終了。今後は「Googleアナリティクス4」に切り替えてください』

というアナウンスがありました。

そのため、25日目のネタ解説でGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)のキャプチャーを“記念”に載せました。

何年後かにこのブログを見たときに

『昔はこんなことをやってたんだな~』

と思う時代が来るんでしょうね。

引き続き「#100日以内に死ぬ広告運用者」解説シリーズをよろしくお願いいたします。

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